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期待以上の翻訳サービスを得るには?
日本人著者の多くは、翻訳を単一ステップの作業とみなし、原稿を正確かつ忠実に翻訳する全責任は翻訳者にあると考える傾向があります。そのため、翻訳された文章を一読し、誤解、間違い、専門用語の誤用があることを発見して失望することとなります。あるいは、専門分野特有の「雰囲気」が欠如していることに気付き落胆する場合もあります。これらの問題や期待度とのギャップは、翻訳を依頼する際に数項目の簡単なガイドラインに従うことによって解消することができます。
翻訳は「プロセス」
「優れた翻訳」結果を手に入れる秘訣は、翻訳がワンステップの作業であるという考え方を捨てることです。むしろ、翻訳作業は複数のステージで構成されており、著者と翻訳者が一連のプロセスを通し複数の役割を果たすことによってのみ、優れた翻訳結果が得られると理解すべきでしょう。翻訳(初稿)開始前、作業中、完了後の各段階において、著者は様々な方法で翻訳者を支援することができ、より良い結果に導くことが可能となるのです。
原稿の準備が大事
依頼前の段階で最初に注意することは、日本語のオリジナル文書が明確であり、間違いがないかどうかを確認することです。オリジナル文書に存在する不明瞭な点は、翻訳後のテキストでも不明瞭な表現となる可能性が高く、また誤解や誤訳の原因ともなります。原文中に間違い(不正確なデータ、不正確な数値、不正確なナンバリング、誤字等)が存在すると翻訳者を混乱させ、誤りに気付かない場合には、間違いがそのまま翻訳文に反映される結果となります。原則として、翻訳文の仕上がりのクオリティーはオリジナル文書のクオリティー以上にはなりません。特に、期限に間に合わせるために急いでいるときなど、著者および共著者が原稿を十分に見直さずに翻訳者へ提出しがちですが、このような焦りは禁物です。日本語原稿の点検漏れが、翻訳結果に失望を抱く最大の原因となりうるのです。
翻訳者に参考資料の提供を
翻訳を依頼することにより、著者と翻訳者の間にはある種の「パートナーシップ」が成立することとなります。著者が「良い」(期待通りの)翻訳結果を得る確率は、翻訳開始前に可能な限りの情報を提供して翻訳者に協力する責任を果たすことで一段と高まります。
例えば、論文に添える図表、説明のための簡図等は、翻訳の必要がない場合でも参考資料として提供すると良いでしょう。翻訳者がテキストの意味を理解する際に、このような情報は大いに役立ちます。また、投稿した英論文に日本語でリバイズを加えた場合、リバイズ前の英論文も提出して頂けると参考になります。その他、既にジャーナル等に発表されている、同分野の英語の「参考文献」の提供もとても重要でかつ役に立ちます。この種の参考資料により、専門用語ばかりでなく、対象分野の有用な背景情報を得ることができるため、翻訳者にとってこの上もない資料となります。また、参考資料として用意した論文を模範として翻訳するよう翻訳者に依頼することが可能な場合もあります。また、専門分野が新興の技術と関連している場合、あるいは学際的な領域である場合は特に、用語の解説や専門用語リストを翻訳者に提供してください。時間の節約にもなりますし、また誤解を防ぐという点でも翻訳者を大いに助けることができます。原稿で使用されている特殊な専門用語が辞書に収録されていない場合、あるいはインターネット上で普及していない場合など、翻訳者の誤解と労力を大幅に軽減します。また、日本語のオリジナル文書の該当箇所にあらかじめ英語の専門用語を挿入することも検討してみてください。翻訳者にとって非常に便利であり、また指定された用語は翻訳文に確実に使用されることになります。
尚、参考論文や専門用語リストを提供するタイミングは、翻訳作業の開始前が良いでしょう。翻訳プロセスの初期段階、すなわち依頼文書を原稿の分野に最適な翻訳者に割り当てる際に、翻訳コーディネーターも情報を活用することができるからです。このような観点から、論文の専門分野に関しても可能な限り詳細な説明が必要とされます。また、翻訳者が、対象となる読者層に合わせて翻訳できるように、ターゲット読者層または翻訳された論文の発表方法等についても情報を提供してください。さらに、翻訳を依頼する際には、その他の希望事項(例:イギリス英語/アメリカ英語、語数制限、原稿のスタイル)もお知らせください。また、原文と「完全に一致」した翻訳を希望するのか、逐語訳を希望するのか、「自由な」翻訳を希望するのか、あらかじめ指定することもお奨めします。
原稿の提出
原稿を提出する際のフォーマットについてもご一考ください。今日、ほとんどの翻訳者が、より良い翻訳を提供するために、各種ソフトウエアやインターネットを利用しています。彼らはファクシミリで送信された原稿やプリント原稿よりも、可能な限り電子ファイルの形で翻訳用の原稿を受け取ることを希望しています。スキャンされた文書より、ワード文書が好まれるといえます。
翻訳をチェックすること
原稿の準備段階、翻訳段階が終了すると、著者は「ファーストチェック」段階に臨むことになります。翻訳が「プロセス」であることを理解しておらず、ファーストチェック段階で「完璧な」翻訳を入手できると期待している著者にとって、ファーストチェックは非常に難しい関門です。著者は、誤解、不明瞭な表現、専門用語の誤用等を発見し、翻訳者の能力に憤慨したり疑いを抱いたりします。しかし、このような問題はファーストチェック段階でよく発生するものです。ファーストチェック段階の主な目的は、翻訳が原文の意味を反映していることを確認することです。目的が「点検」であることを認識することが重要です。著者がこの「点検」段階で特定した問題は、次の「再校正」段階で対処されることになります。翻訳者にコメントや修正を送り返して「再校正」段階に入る際に、翻訳者が原文の意味を誤解していると思われる部分をハイライトし、代替表現または説明を加えてください。翻訳された文章の一部に修正を加えても良いでしょう。また、翻訳者からコメントや質問事項があれば必ず回答を提供してください。
翻訳者(通常、サイエンスのバックグラウンドを持つネイティブ校正者と協力して作業を進めています)は、「再校正」段階で、著者のコメントや修正を再検討し、ネイティブ校正者の助言を参考にして、訂正および再翻訳を適宜行います。訂正された翻訳は、著者に返送して最終的な承認を得ることになります。翻訳プロセスに係わる全ての人々(著者、翻訳者、翻訳チェッカー、ネイティブ校正者、コーディネーター)がそれぞれの役割を果たすことにより、著者は高品質の翻訳文を確実に入手することができます。
より良い結果を得るために
要約すると、翻訳は複数のステップで構成されたプロセスであり、ワンステップの作業ではありません。翻訳を依頼して高品質の結果を手に入れるためには、自らの責任を受け入れて、以下のガイドラインに従ってください。
-
1) 翻訳原稿入稿前に、テキストが可能な限り明確であり、間違いが
含まれていないことを確認する - 2) 図表や図説については、翻訳の必要がなくても提供する
- 3) 参考に、既に発表されている同分野の英語の「参考論文」を提供する
-
4) 新興分野または学際的な分野の場合は特に、用語解説や
専門用語リストを提供する - 5) 原稿は電子ファイルで提供する
-
6) ファーストチェック段階では、パートナーである翻訳者と協力し、
感情的な部分を廃して問題を特定することに集中する - 7) これらのプロセスを守り、より良い結果を得るために適切かつ十分な時間を費す
ステップに従って作業を進めることにより、著者は、期待通りの高品質の翻訳を確実に手に入れることができるのです。
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