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ジャーナルのインパクトファクターに惑わされていませんか?
ジャーナルのインパクトファクターの信頼度は?
ジャーナルのホームページを訪れるとほとんど例外なく、「Impact Factor」という言葉とその数字が記載されています
。この数字は多くの議論をよんできました。インパクトファクターとは、Thomson Scientificが9,000以上のジャーナルについて、過去2年間の統計に基づき毎年発表するものです。科学研究分野におけるその影響力は広範囲におよび、特に研究資金を割り当てる際に用いられます。ジャーナルの名声を判断するのみでなく、研究費用採否を査定する際、研究者や大学の学部が発表する研究論文の成果を評価するためにも使われます。同じ数の論文を発表した2人の研究者が同一の研究課題で資金給付を申請した場合、彼らが実際に論文を発表したジャーナルのインパクトファクターが採択の決定要因として使われることがよくあります。インパクトファクターは、ひとつのジャーナルに発表された論文が、他の文献に引用される頻度を測る指標です。簡単に言えば、インパクトファクターの高いジャーナルとは、掲載論文が他の文献への引用率が高いということです。例えば、インパクトファクターが10である場合、平均してそのジャーナルに掲載された各論文が他の文献に10回引用されているという意味です。
2007年のNature誌のインパクトファクターは26.7でした(それに対して、同じ年のScience誌のインパクトファクターは30.0でした)。この数字は、以下の数式1で算出されます。
(2005~2006年の間にNature誌に掲載された論文が、2007年中に対象ジャーナルに引用された回数)÷(2005~2006年の間にNature誌に掲載された"引用可能な文献”の合計数)
表面的には、インパクトファクターは、ジャーナルの評価をはかるための客観的な尺度を提供します。インパクトファクターが発表される以前は、ほとんどの研究者は、自らの感覚的な"評判”・"信望”によってジャーナルを判断していました。これは非常に主観的であるため、明らかにあまり好ましくない指標となってしまいます。
では、インパクトファクターとはどれだけ信頼に値するものなのでしょうか。その信頼性に対する疑問の声も多く聞かれます。インパクトファクターは濫用されやすくまた操作されやすいと言う批評もあります。インパクトファクターの弁護をするなら、この数値は大量のデータ(9,000以上のジャーナル2)を用いて計算されています。しかし、上述の数式にある"引用可能な文献”をどのように定義するかが一つの問題です。通常、ジャーナルには研究論文に加えて、エディトリアル(editorial)、ニュースアイテム(news items)、そしてコレスポンデンス(correspondence)(いわゆる「前付け、front-matter」)があります。この前付けの部分はジャーナル内の"引用可能な文献”から除外されています。しかし、前付けと研究論文の区別は明確ではありません。ジャーナルは何が前付けであるのかについてThomson Scientificと交渉することができ、その結果ジャーナルのインパクトファクターが大きく異なってくることがあります。
例えば、2002年には7.00だったCurrent Biologyのインパクトファクターは、2003年には11.91に上昇しました。これは、ジャーナルに掲載された論文の数自体は増えたのにも関わらず、2002年には1032だった上記の数式の分母が、2003年には634に減ったことが原因です。
事態を複雑にしているもう一つの要素は、独自の研究についての原著論文よりも、総説の方が一般的に多く引用される事実です。いくつかのジャーナルはこの事実を利用し、総説を多く掲載して人為的にインパクトファクターを引き上げています。
インパクトファクターについて考える際に大切なことは、その制約・条件を考慮に入れることです。その一つは、インパクトファクターは単独の数値だということです。一般に統計分野では、一つの数値にその変動の度合い(偏差値など)が添えられます。インパクトファクターの統計学的な評価が行われた結果、インパクトファクターに基づいた様々な意思決定は「指標が持つ不確実性が無視されることによって誤解を招く可能性がある」ということが分かりました4。また、インパクトファクターが小数点以下3桁までの数値で示されていることから、それがより正確な数値であるという間違った印象を与えるということも指摘されています。
インパクトファクターについてのもう一つの制約は、その数値が平均値であることです。ジャーナルが非常に引用率の高い論文をいくつか掲載すれば、平均値であるインパクトファクターは高くなってしまいます。例えば、Nature誌に掲載された論文の25%が2005年の同誌のインパクトファクターの89%に寄与しています3(つまり、 残りの75%の論文はインパクトファクターに11%しか寄与しなかったということです)。
また、異なった分野のジャーナルを比較するためにインパクトファクターを用いることはできません。研究分野によって発行される論文数が大きく異なるからです。
結論として、ジャーナルのインパクトファクターはジャーナルの意義を示す便利な指針になります。しかしながら、その制約を理解しておくことが重要です。一つの数値だけでジャーナルの価値、重要性を特徴付けることができると考えるのは単純すぎます。 論文を発表するジャーナルを選ぶ際には、他の要素も考慮に入れることが大切です。ジャーナルの読者層、数、掲載時に料金が要求されるか、受理してもらえるファイル形式などがそれらです。
関連特集についてはこちらをご参照下さい。 [論文発表に最適なジャーナル] すなわち、論文を投稿するジャーナルの検討をする際にインパクトファクターは考慮しても、それだけに没頭することは避けるべきだということです。
参考文献
1. Impact factor(インパクトファクター) (http://en.wikipedia.org/wiki/Impact_factor)
2. "Making an impact”, Nature Materials, Vol. 3, No. 8, 495 (2004)
3. "Show me the data”, The Journal of Cell Biology,
Vol. 179, No. 6, 1091-1092 (2007)
4. "Reliability of journal impact factor rankings”,
BMC Medical Research Methodology 2007, Vol. 7, p. 48 (2007)
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