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査読者としての心得とは

- G.A., シニアエディター

特定の分野の専門家として広く認められている研究者であれば、有力学術誌から定期的に査読を依頼されることは珍しくありません。一方、駆出しの研究者やより一般的なバックグラウンドを持つ研究者は、比較的知名度の低いジャーナルから査読依頼の連絡を時折受けるといったところでしょうか。それではジャーナルによって、どのように査読内容が変わってくるのか、具体的に見ていきましょう。

インパクトファクターの高いジャーナルでは、投稿論文はまず編集委員や編集事務局のスタッフによってふるいにかけられます。よって査読者の手に届く論文にはある程度の質が見込まれますが、かといってその論文が採択のレベルに達しているとは限りませんし、採択にはまるで程遠いという可能性もあります。 査読コメントは、インパクトファクターの高いジャーナルの編集委員が掲載に足る高水準の論文を選び抜くための重要な判断材料となります。そのため査読者は、統計的手法やデータの解釈、また研究の企画面に関する課題など、研究のさらに根本的な側面に関わる問題を指摘することになるでしょう。

インパクトファクターの低いジャーナルは投稿論文数が少ないため、投稿された原稿の質を向上させるために、編集委員が査読者からのアドバイスやコメントに頼らざるを得ないという実情があります。著者は査読コメントに基づいて、再投稿に向けた論文の改善に取り組むことができます。このような場合、研究目的や結果がいかに明確にまとめられ、提示されているかといった具体的な点が査読の焦点となるでしょう。

論文提出の準備段階で、著者がどれだけの労力を費やすかという点においても、ジャーナルのレベルによって違いが見られます。インパクトファクターの高いジャーナルに投稿する著者は、論文が科学的メリットという観点から査読されるよう、原稿の書式やレイアウトなどを整える努力をしています。インパクトファクターの低いジャーナルでは、図や表の作成に時間を掛けていないために誤表記があったり、単位が含まれていなかったりといったことがあるかもしれません。 そのため、査読コメントはこのような細部に関する具体的な指摘を含むことになります。

論文査読を行うジャーナルのインパクトファクターの違いにかかわらず、査読コメントは問題点を指摘するときでも建設的であること、また著者に対する礼儀を忘れないことが大切です。査読をした論文が再提出されれば、修正原稿の再査読と、査読コメントに対する著者の返答の確認を頼まれることもあるでしょう。有益で配慮に富んだ指摘が査読コメントに含まれていれば、著者もそれに応えて査読者の助言を受け入れようという気持ちになりますし、丁寧な返答を送ってくるはずです。

学術誌の査読者は、個々の論文の質を高めるための手助けをするばかりでなく、すばらしい新発見を世に紹介することにより、科学コミュニティー全体に貢献するという重要な役割を担うべき存在なのです。


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