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掲載論文の撤回への懸念

- G.A., シニアエディター

学術ジャーナルの編集委員は、担当ジャーナルの名声を高めようと懸命です。最先端の研究成果を自分のジャーナルに集め、出版することで、ジャーナルのインパクトファクターが徐々に上昇する様を見るのは、編集委員冥利に尽きるといったところでしょう。しかしジャーナルの名声を守り管理する役割を担う編集委員が最も恐れる事態のひとつとして、掲載済みの論文の撤回を迫られることが挙げられます。

「撤回」とは、すでに出版された論文を、その論文を掲載したジャーナルが取り下げることを言います。これは、論文中の誤記や誤ったくだりを改める「訂正」よりもかなり深刻なものです。撤回するということは、出版された論文が実のところ受理されるべきではなかったと言明することなのです。ジャーナルの論文撤回の最もよくある理由として、データ処理の際の非意図的な誤り、すでに発表済みの図表の再利用、倫理委員会のしかるべき承認を受けていないこと、さらには科学における不正行為などが挙げられます。

掲載済みの論文に深刻な不備を認めた場合に、著者自身が撤回を求めることはあります。しかしさらに深刻な問題が読者から指摘されることにより、ジャーナルは論文撤回を迫られることもあります。ニュースがあっという間に広まる今の世の中、論文撤回という事件によってひとりの科学者の信望とキャリアに甚大な傷がつくことは言うまでもありません。さらに編集委員は、撤回によって否定的な評判が生まれ、ジャーナルの名声が損なわれることを避けるために、油断なく目を光らせている必要があるのです。

今後、ジャーナルから査読者コメントがなかなか送られてこなかったり、署名済みの同意書や機関の倫理委員会の承認証明書の提出を求められて苛立つようなことがあったときには、ジャーナルは論文撤回に至るようなことがないように、査読の段階で慎重にならざるを得ないこともあるということを思い出してください。


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