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- G.A., シニアエディター

eLifeに掲載された新しい研究論文で、長い間そうではないかと疑われてきたことが実証されました。過去150年の間に人間の平均体温が低下してきているのです1860年代以来、人間の正常体温は37℃であると考えられてきましたが、最近のいくつかの研究で矛盾が認められ、今まで受け入れられていた平均体温が誤りであることが示唆されていました。

今回の論文では、157年の間に得られた人間の体温の測定サンプル677,423件について分析が行われました。このデータに基づき、研究グループは人間の平均体温が産業革命前の時期と比べて約1.6%低下していると論証しました。

これまで受け入れられてきた値と最近の測定値との相違は、1世紀以上前に使用されていた機器に限界があったと考えられることが多かったのですが、今回の研究のデータにより、測定値の変化は生理学的変化に直接起因することが明らかになりました。著者らは、体温の測定値に変化をもたらした要因としていくつかの可能性を提示しています。何よりもまず、19世紀以降、生活水準や衛生水準が向上し、歯の衛生状態も良くなり、結核などの主要な感染症の発生率も低下したため、おそらく一般人の炎症度が低下しているからではないかと著者らは考えています。

こうした体温の変化が長期的にどのような影響を及ぼすのかは明らかではありませんが、人間の体温が比較的短い間に変化したということは、私たちのライフスタイルが気付かないうちに重要な点で私たちの体に影響を与え得るということを示唆しています。

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