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- G.A., シニアエディター

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的パンデミックを通し、人々は一般集団における疾病発生率を追跡する重要性を強く意識するようになりました。医療従事者によるアクセスが可能なデータベースに収集されたデータは、新たに発生した病原体の特定・対処に非常に有益であるといえます。 しかし、こうしたデータの恩恵を受けるのは地球上で人類だけではありません。

カリフォルニア大学デービス校の研究者は、Wildlife Morbidity and Mortality Event Alert Systemと名付けた野生生物の疾病監視システムを開発しました。このシステムは、カリフォルニア州内30ヵ所の野生生物保護センターに収容されている動物のデータ分析を行います。報告書は自然言語処理を用いて動物種、年齢、保護センターへの収容理由、最終診断結果により分類されます。次に、人工知能によるデータのパターン認識が行われ、特定種における疾病の大流行の可能性を野生生物専門家に警告します。

研究者らはWildlife Morbidity and Mortality Event Alert Systemの有効性が確認された予備試験の結果を、英国王立協会紀要Bに論文として発表しています。その試験結果を踏まえ、彼らはカリフォルニア州外の世界各地に野生生物保護センターのネットワークを構築し、同アラートシステムの適用範囲を拡大したいと考えています。

野生動物から人に危険な病原体が持ち込まれる可能性があるとの認識が人々の間で高まっていることから、こうした形の監視システムを広く導入することは、野生生物専門家による病気や怪我をした動物の治療とリハビリに役立つだけでなく人類にもメリットがあると考えられます。人工知能を活用したこのようなシステムは、専門家が有益な情報を適時に得られるようにする、費用効率の良い手段となるでしょう。

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