
- G.A., シニアエディター
進化とは一般的に極めて長い時間スケールでしか確認できないプロセスだと考えられています。しかし、時に現在進行中の進化を垣間見ることができる場合もあります。 例えば、イギリスの自然愛好家が産業革命期にオオシモフリエダシャクの暗色化という進化を観察できたことはよく知られています。当時、大量の石炭燃焼によって放出された灰や煤が大気中に留まり、樹木などの表面に付着しました。その結果、暗色の蛾は捕食動物に見つかりにくくなり、自分の遺伝子を子孫に残すことに成功したのです。
同様の現象は、動物界のいたるところ、とりわけ寿命の短い小型の生物で確認されています。しかし、最近Science誌で発表された興味深い研究によると、人間からの圧力によってアフリカゾウに今日みられるような進化が生じたことが明らかになったというのです。
研究者らは、モザンビークのゴロンゴーザ国立公園に生息するゾウを対象に、密猟による強い圧力の影響とその結果生じる個体数の減少を調査しました。密猟者がゾウを標的にするのは、その牙から極めて人気のある象牙を手に入れるためです。ところが、研究者らは牙を持たずに生まれてくる雌ゾウの数が増えていることに気づきました。調べてみると、この形質は伴性遺伝であり、牙のない表現型を発現させる特定の遺伝子を保有する雌ゾウは密猟の犠牲になりにくいことが分かりました。
密猟は世界中の多数の種にとって大きな脅威となっています。しかし、この問題を子細に調査すればするほど、密猟がもたらす害について理解が深まってきます。この研究者らが発見したように、たとえ密猟者が種を絶滅に追いやらなかったとしても、彼らの行為が長きにわたり証拠を残すこともあるのです。
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