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- A.S., エディター

最近、Googleの量子コンピューターを使用して時間結晶の観測に成功したことが報告されました。2012年に最初に提唱された時間結晶は精巧な量子系であり、最低エネルギー状態において時間と空間の両方に周期性をもつ構造をとります。 この名称は、空間的な周期性をもつ原子配置をとるダイアモンドなどの物理的な結晶に例えて名付けられています。

時間的な周期性をもつ結晶という概念は、少し直観的ではないかもしれません。例として、振り子が周期的に同じ場所に戻る振り子時計と時間結晶を比較してみましょう。時計の振り子は機械的に揺れることでエネルギーを失うのに対して、時間結晶はエネルギーの出入りなしに状態間を「揺れる」ことが可能という違いがあります。このことは時間結晶のエントロピーが増大しないことを意味しており、周期性があっても時間結晶を使用して永久機関を作ることはできないということに注意が必要です。

時間結晶は自然界に見られない非常に特異な物質状態であるため、科学者がどのように時間結晶を利用できるかは現時点で不明です。ただし、これらの珍しい結晶を確実に実現できるようになれば、興味深い研究分野につながることが予想されます。実際に、時間結晶の観測は理論物理学の偉業であると同時に、量子計算にとって新たな画期的な出来事でもあります。今後、量子プロセッサーがより高性能になるにつれて、物理学や化学の分野で新しい発見がさらに生まれるかもしれません。

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