特集記事

- K.J., エディター

科学者は、様々な病気の薬や治療法に利用できる新たな生物を常に探し求めています。未開の危険な地での調査はリスクを伴いますが、それも避けられません。 なぜなら、一般的な病気の多くが現在の治療薬に対して日増しに耐性を持つようになってきているからです。例えば、多剤耐性黄色ブドウ球菌のように絶えず進化している感染症の治療には、新しい抗生物質が必要となる可能性があります。

その一方で、現在、生物多様性の喪失が薬の未来にどう影響を及ぼすかについて世界的に懸念が高まっています。バイオロジー・ディクショナリーによると、生物多様性とは単一の生態系または生息環境内のすべての生命体のことであり、種の数や多様性に加えて、気候のようなすべての環境的側面も含むとされています。例えば、植物相といった生態系や生息環境の一部が失われるだけでも、その特定の生態系や生息環境のみでなく地球全体にも害を及ぼすことになります。

この問題は、植物や他の生物の医薬利用に関する知識を持つ先住民の文化、特に先住民の言語が消滅することにより、さらに深刻化します。マタピ族は、コロンビアのアマゾン熱帯雨林に住む少数の先住民グループです。同地域内の他の先住民文化と同様に、マタピ族は様々な病気に対する植物を用いた治療法など、培った知識を子孫に伝えてきました。もともとは遊牧民でしたが、1980年代に他の5つの民族グループとともに居留地での生活を余儀なくされ、すでに植民地化によって脅かされていた伝統や言語はさらに衰退しました。その結果、他の文化的要素とともに薬用植物に関するマタピ族独自の知識は減少しました。この知識をすべての人類の利益のために利用できたかもしれないことを思えば、事態は深刻です。

アメリカ言語学会は、科学的観点から考えて、言語が消滅すると多くのことが失われると述べています。地域社会の歴史はその地域の言語を通して伝えられるため、言語が消滅すれば、その地域社会の初期の歴史に関する重要な情報も同時に失われる可能性があります。残念ながらその中には、私たちの社会全体の健康のために、いまだ科学者が研究や試験を実施したことがなく、実際に活用もされていない、植物の医薬利用に関する情報も含まれているのです。

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