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- K.J., エディター

交通のハブ、大規模なショッピングセンター、休日のイベント会場。このすべてに共通するものが一つあります。人混みです。ひどく混雑した騒々しい場所で、とりわけ歩行者の流れに逆らって進まなければならない場合、不安になったり違和感を覚えたりすることがあるものです。

そうした状況に対応する一つのコツは、歩行者によって自然に作り上げられる通行レーンに合流できるようになることです。英国バース大学のティム・ロジャーズ教授が率いる数学者で構成された研究チームは、ポーランドの体育アカデミーに在籍するボグダン・バチク教授と共同で、人混みの中を移動する歩行者が自然にレーンへ収まっていくという理論の検証を行いました。その結果、異なる目的を持つ二つの歩行者グループが、混雑した空間で互いの進路を横切る場合、歩行者は自分自身を自発的に律して衝突を避けようとしていることが分かりました。個々人によるそうした無意識の決定が累積して、結果的にレーンが作り上げられるのです。

屋外の歩道や建物の廊下、エスカレーターなどの場所で歩行者によって作り上げられるレーンを安全に通行できるように、ガイドとなるルールが存在しています。これには明文化されたものもあれば、そうでないものもあります。特にエスカレーターの場合、標識には、立ち止まって乗る人は一方の側に立ち、歩く人のためにもう一方の側を空けておくように促す指示が書かれています。とはいえ、両方の側に立って乗る方が良いということはないのでしょうか。ロンドン交通局のカスタマーストラテジーアナリスト、シーリア・ハリソン氏と同僚らは混雑する平日の朝、ロンドン市内のホルボーン駅で実験を行いました。その結果、あるエスカレーターでは、利用者が右側に立ち止まった場合、午前8時30分から午前9時30分の間に通常12,745人の利用客を輸送することができるのに対し、両側に立った場合には輸送力が16,220人に増加することが分かりました。香港と日本では、駅構内でのこうしたルール変更がすでに実施され始めており、この動きが広がる可能性があります。

ここで述べたルール変更はエスカレーター以外の歩行者には当てはまりませんが、人々が群衆の中を移動する際の動きの研究が進み、歩行者の流れをより効率的にする方法への議論が深まるにつれて、混雑した場所での通行ルールが変化する可能性があります。皆さんがお住まいの地域では、歩行者の通行ルールに何か変化はありましたか。

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