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- K.J., エディター

厳しい逆境の後に大きな変革が起こることがよくあります。人災(戦争、有害化学物質の流出、気候変動)であれ、天災(疫病の世界的大流行、台風、飢饉)であれ、災害が起こると、克服すべき地球規模の課題が浮かび上がります。例えば、COVID-19の世界的大流行によって、mRNAワクチンなどの医薬品分野が急速に進展し、医療産業が極めて短期間のうちに変貌を遂げました。 人類学的なレベルに視点を移すと、孤立、過労、ワークライフバランスの不均衡が健康に及ぼす影響を対象とした研究が再び活性化しています。

おそらく次に起こる大きな変化は、人工知能の急速な開発と統合を別にすれば、労働文化の抜本的な見直しです。近年では、週5日間、通勤時間を除いて週40時間余りの労働が、ほとんどの業界で標準となっています。しかし気候問題によって、こうした慣行を維持することが許されなくなる可能性があります。なぜなら、通勤に必要とされる交通機関と、こうしたライフスタイルを支える製品の製造に必要な資源の消費が、温室効果ガスを排出する大きな要因の一つになっているからです。カーボンフットプリントを低減するためには、「ニューノーマル」の労働文化を見出すことが効果的かもしれません。

ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)の建築環境学部で持続可能性に関する研究を行っているトミー・ウィードマン教授によると、気候変動と持続可能性の専門家は、化石燃料に依存しない社会を地球規模で実現する「管理された脱成長」と呼ばれる手法を提案しています。これは、先進経済諸国で見られる果てしない成長、つまり膨大な量の資源を消費し、同じだけの廃棄物を生み出すような成長を、計画的に管理し低減することを意味します。 要するに、過剰な労働を減らすことで過剰な消費が減り、結果的に過剰な生産の抑制につながります。一種のフィードバックループが形成されて、必要とされる分だけが生産され、それ以上は生産されなくなるのです。

これは労働文化の面でどのような意味があるのでしょうか。現在の慣行を改め、過剰な消費を減らす方法はたくさんあります。例を挙げれば、週4日勤務の採用、従業員に対するリモートワークの許可、職場で消費する電力と水の削減、ペーパーレスへの移行、製品に対して行う梱包の簡素化など。企業がカーボンフットプリントを削減できる既知の方法に加え、新たな方法を見出すことに焦点を当てた研究は、私たちの働き方と生活様式の両面に思いもよらない変化をもたらす可能性があります。

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