特集記事

- K.J., エディター

アルコールは人間を含む多くの脊椎動物にリラックス感をもたらし、人々は息抜きや、抑制をはずして楽しむ目的でアルコールを広く利用しています。しかし、このような気楽な態度がトラブルを招くこともあります。 過剰なアルコール摂取は常に急性アルコール中毒のリスクを伴うことから、日本のビール酒造組合はアルコール飲料を安全に飲んでもらうために、成人、特に若年成人向けに適量飲酒を勧めています

若年成人は同調圧力に弱く、危険な行為に関わってしまう傾向があります。そのため、この年齢層は、大量飲酒に起因する迷惑行為、事故、物的損害、傷害、死を防ぐことを目的とした様々なキャンペーンや法律で主要なターゲットとされています。テキサス大学サウスウエスト医療センターの主任研究員である内分泌学者のデイビッド・マンゲルスドルフ教授は、アルコール中毒の治療に利用できる薬物療法はなく、医療スタッフにできることは、アルコール中毒患者が目覚めるまで経過を観察することだけだと嘆いていました

最近の研究では、肝臓で作られて糖と脂質の恒常性を制御する、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)と呼ばれる天然のホルモンが、いつの日かアルコール中毒の作用を軽減させる有効な薬物療法薬になる可能性があることが示されました。マンゲルスドルフ教授とスティーヴン・クリーバー博士の共同研究室ではマウスを用いた動物実験を行い、酩酊したマウスにFGF21を投与したところ、対照マウスに比べ、アルコールによる酩酊状態から2倍速く覚醒し、さらにはより長時間、転倒することなくバランスを維持できました。このような有望な結果が得られたため、ヒトを対象とした研究でも同様な結果を示すのではないかと期待されています。

当面、政府や民間組織は過剰飲酒の危険性について一般市民への啓発を続けていくでしょう。現在、急性アルコール中毒の作用を打ち消す医薬品は市販されていないという事実を筆者も知りませんでした。この事実は全ての人に共有される必要があると思います。皆さんはどうでしょう。ご存じでしたか?

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