特集記事

- G.A., シニアエディター

科学雑誌Nature Astronomyに掲載された論文で、初めて月に洞窟があることが明らかになりました。この驚くべき発見によると、深さが少なくとも100メートルある洞窟は「静かの海」に存在しており、月面基地の建設候補地として大きな可能性を秘めています。この洞窟は「地下の未知なる世界」に隠されている多くの洞窟の1つと考えられており、月に人類が住むという課題に解決策を提供する可能性があります。

各国が月面上に継続的に人類を存在させようと競う中で、宇宙飛行士を放射線や極端な温度、宇宙天気から守ることは最優先事項です。洞窟の深さにはロジスティクス上の課題があり、深部へアクセスするには懸垂下降やジェットパックの使用など革新的な対策が必要となりますが、いずれは有人探査の拠点になるかもしれません。

イタリアのトレント大学のLorenzo Bruzzone教授とLeonardo Carrer教授がこの洞窟を発見し、歴史的なアポロ11号の着陸地点「静かの海」にある縦孔の開口部からレーダー技術を使用して洞窟を観測しました。洞窟には月面に空いた天窓があり、垂直または張り出した壁と傾斜した床につながっています。数百万年から数十億年前に溶岩で形成されたこの構造は、スペインのランサローテ島にあるクエバ・デ・ロス・ベルデス(ベルデ洞窟)など、地球上で見られる火山洞窟に匹敵します。

この発見は潜在的な月の居住地としてだけでなく、科学研究においても重要です。洞窟内にある手つかずの岩石から幅広い地質学的記録が得られ、月や太陽系の歴史に関する洞察が提供される可能性があります。また、研究の意義は月にとどまらず、火星での洞窟探査や生命の痕跡探索にも役立つかもしれません。Bruzzone教授とCarrer教授によるこの先駆的な研究により宇宙探査や地球外環境の理解に新たな道が開かれます。

英語版はこちら