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- G.A., シニアエディター

画期的な研究で6種の類人猿(チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、ボルネオオランウータン、スマトラオランウータン、フクロテナガザル)の完全なゲノムが解読され、霊長類進化に関する新しい洞察が得られました。Nature誌に発表された研究は、ペンシルベニア州立大学、米国立ヒトゲノム研究所、ワシントン大学の研究者が主導し、先端技術のロングリードシーケンシングを行って各染色体の端から端まで連続したDNA配列を構築しました。 研究チームはこの配列とヒトゲノムを比較して類人猿の遺伝的多様性が従来考えられていたよりも高いことを明らかにし、種固有の特徴や適応を示す新しい遺伝子と進化の指標を発見しました。

リファレンスゲノムの完全性は、技術的および計算上の制約により制限されていた以前の断片的なものに比べて大きな進歩を遂げています。新しい配列から食事、免疫、細胞機能に関連する遺伝子多様性が示され、大型類人猿への進化をもたらした要因について理解が深まっています。また、一般的な二重螺旋構造とは異なるDNAの非標準構造も明らかにされており、遺伝子調節などの重要な過程に影響を与えるかもしれません。これらの構造にはがんなどの疾患に関連しているものもあり、人間を含め、種を超えた健康に関する研究に新しい可能性が開かれます。

ゲノムは種の保存に不可欠なツールです。絶滅の危機に瀕している類人猿、特に生息地が失われているオランウータンのような種の遺伝的多様性を理解することは、個体群を増やす計画を策定する際に役立ちます。この研究は、人間に最も近い類人猿との遺伝的な違いを解明することで人間の進化に対する理解も深めています。ゲノムから同定された新しい遺伝子は人間の知能などの特性に関与している可能性があり、人間が唯一無二である理由を解明する手がかりとなるかもしれません。

この研究により研究者は比較ゲノミクスの強固な基盤を構築することができ、進化、健康、種の保存に関する精密な調査が可能となります。類人猿の完全なゲノムが解読されたことで、遺伝的多様性の研究に明確な基準が提示され、研究者はこれらのデータを活用して絶滅危惧種の保護や人間の疾患メカニズムの解明に取り組むよう求められています。ゲノム配列が公開されたことでその利用が可能となり、幅広い共同研究が期待されます。この機会を活かし、ゲノム研究の対象をさらに多くの類人猿の集団や種に広げ、得られた知見が具体的な保存活動や健康成果に結びつくよう努めなければなりません。

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