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- G.A., シニアエディター

蚊がいないことで知られていたアイスランドで初めて蚊の存在が確認され、生態系に重要な変化が生じました。2025年10月16日、アイスランド西部のキョースに住むBjörn Hjaltason氏が自宅の庭で3匹の蚊を発見し、アイスランド自然史研究所に報告しました。昆虫学者のMatthías Alfreðsson氏は、発見された蚊を、北欧に広く分布し寒冷地でも生きられるCuliseta annulataと特定しました。 アイスランドの野外で蚊が確認された最初の記録となり、これまでの飛行機で運ばれてきた単独の一時的な事例とは異なります。

アイスランドは、頻繁な凍結・解凍を繰り返す海洋性気候と地理的な孤立により蚊の繁殖が抑えられ、これまで蚊がいない地域として知られてきましたが、今回の発見によってこの特異な地位が揺らいでいます。特徴的な羽毛状の触角をもつ雄と雌の標本は、アイスランド自然史研究所の分析によって確認されました。過去20年間でアイスランドの気温は約2°F上昇しているため、気候変動によって新たな昆虫種の定着が進んでいる可能性が高く、21世紀に入ってからはすでに200種以上が記録されています。

この発見は、2015年のシラミバエ(Hippoboscidae)の到来に続くもので、温暖化するアイスランドの環境に外来種が適応する可能性があるという傾向を示しています。Culiseta annulataは主要な病原体の媒介種ではありませんが、その存在は生態系の変化や、他の蚊の種が続いて到来する可能性に対する懸念を引き起こしています。研究者は、アイスランドの気候変動が外来種の侵入をますます助長し、従来蚊の生息には不向きだった環境を変える可能性があると指摘しています。

Culiseta annulataが定着可能な個体群を確立したのか、それともこれは単独の一時的な事例に過ぎないのかを評価するために、アイスランド自然史研究所による継続的な監視が非常に重要です。今後の研究では、気候変動による生態系の変化をモデル化し、それがアイスランドの生物多様性に与える影響に焦点を当て、外来種の動態に関する世界的な研究に貴重なデータを提供することが期待されます。

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