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英科学誌「ネイチャー」の2017年1月3日付の記事によると、アルゼンチン政府の科学関連予算の削減に対して同国の科学者の不満が高まっています。これはマウリシオ・マクリ大統領が、選挙中に掲げた公約を反故にして、科学省予算の大幅削減を盛り込んだ2017年度予算案を発表したためです。

この予想外の予算が執行されればアルゼンチンの国家科学技術研究会議(CONICET)での特別研究員のポストを失い、正規職に就く機会から大きく遠ざかる若手科学者は、これに猛反発し、抗議集会やデモを行いました。

研究者と政府は話し合いを続けたものの、閣僚や政府高官から「科学者は研究よりも雇用創出に力を入れるべき」という声が上がり始め、「批判的な思考自体が国家に対する脅威」とまでほのめかすなど、事態はむしろ悪化してしまいました。

科学者たちの猛反発を受け、政府は数百人の科学者の雇用を当面維持する妥協案に同意しましたが、アルゼンチンの科学界にとって全面解決には程遠い状況です。マクリ政権は企業寄りの政策をとる姿勢を変えていません。そのためアルゼンチンでは、多くの若手科学者がより良い機会や待遇を求めて海外を目指し、前政権が公的資金を投入して得られた研究成果が流出するという見方が大勢を占めています。アルゼンチンの状況は、政策の急激な変更が個々の科学者や科学研究全体に大きな影響を与える可能性があることを示しています。