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息をのむような絶景のグランドキャニオンや間欠泉で有名なイエローストーンをはじめとするアメリカの国立公園は、アメリカの自然遺産を代表し国のシンボルにもなっています。国立公園局 (NPS) は全米59カ所の国立公園 (うち14カ所が世界遺産) を管理する部局で、今年8月25日に設立100周年を迎えました。

NPSは1916年の設立以来、自然景観と多くの絶滅危惧種を含む在来野生動物を守ることを最優先とし、先頭に立って国立公園の保護に取り組んできました。また、設立時の使命に含まれる「皆が楽しむことができる公園」の実現にも力を入れており、管理地域の年間利用者数は3億人を超えています。NPSの施策が奏功したことにより、同局は国立公園管理の分野におけるグローバルリーダーとしての地位を固め、自然保護の重要性が広く認識されるようにもなりました。

今日のNPSは、過去には存在しなかったさまざまな問題に直面しています。地球温暖化の影響を受け、ビスケーン国立公園では海水温が上昇しサンゴが白化現象を起こしヨセミテ国立公園デナリ国立公園では氷河が異常な速さで後退しています。地球温暖化の影響による生息地の消失などにより、多くの国立公園で植物動物の数が減少しており、絶滅や生態系への影響が懸念されています。また、水圧破砕法 (フラッキング) の普及は自然景観や野生動物に悪影響を与えているとの指摘もあります。日本でも、沖縄のサンゴの白化北海道の流氷の減少が見られており、このような地球温暖化の影響は他人事ではありません。

自然の景観は永遠に変わらないようにも見えますが、実際自然は環境変化の影響を受けやすく、人間の活動が自然環境に重大かつ不可逆的な影響を与える可能性があります。上記の問題を前に環境意識の向上と環境行動の実践が以前にも増して重要になっています。今年はNPSの一世紀にわたる功績をたたえる年であると同時に、前途に横たわる課題を見つめる節目の年になるかもしれません。