
国連食糧農業機関 (FAO)は、世界の漁業・養殖業の健全性と持続可能性に関する最新データをまとめた「世界漁業・養殖業白書」を2年おきに発表しています。この白書の目的は、政策決定者や業界関係者に漁業と養殖業の正確な現状を報告することです。
2016年版の「世界漁業・養殖業白書」が2016年7月7日に刊行されました。FAOは今回の白書で世界的に魚の消費量が増大していることを強調し、最新のデータで一人当たりの年間消費量がはじめて20kgの大台を超えたことを明らかにしています。現在私たちは、タンパク質摂取量の6.7%を魚から摂取していることになります。
FAOの報告によると、FAOがモニタリングしている商業漁業の野生魚集団における過剰漁獲の割合は2007年以降横ばいで推移していますが、依然としてその30%以上は過剰に漁獲されています。水産資源が人間の活動によって大きな影響を受けていることがよく知られるようになったものの、生物学的に持続不可能な水準で漁獲される魚種の数は1974年の3倍に達しています。養殖はこうした状況を緩和する方法の一つになるかもしれません。現在、養殖は水産物の全体供給量に大きく貢献しており、天然魚に対する漁獲圧力を減らす効果があるからです。
世界中の貧困根絶に向けた協調的努力が成果を挙げたことにより人口が増加し、食生活が変化しています。一人当たりの魚の消費量が伸びているのは、魚を食べると健康効果が期待できることを考えれば不思議ではありません。もっとも、乱獲や養殖に伴う環境負荷による水産資源に対する圧力を下げることができないと貴重な魚種の資源が枯渇してしまう恐れがあります。そうなれば、漁業で生計を立てている人の暮らしや魚を食料源として頼りにしている人の健康に悪影響を及ぼしてしまうでしょう。