
2004年に誕生した電子たばこは、従来の紙巻きたばこより健康的でその代替品になるというマーケティングが功を奏したこともあり、世界的な人気を博しています。一方、電子たばこ製品に対する規制は遅れており、2015年の時点で電子たばこ規制がある国は主要国の3分の2に過ぎません。今年の5月初め、米国の食品医薬品局 (FDA) は、電子たばこの未成年者への販売を禁止し、製品に警告ラベルの表示を義務付ける画期的な措置を発表しました。これにより事実上、電子たばこにも従来のたばこと同じ規制が適用されることになります。
喫煙による死者は世界で年間約600万人に上り、依然として予防可能な死因のトップとなっています。能動喫煙と受動喫煙はどちらも健康に悪影響を及ぼすという多数の科学的証拠を突きつけられ、各国政府は国民の健康を守るために、紙巻きたばこの販売および使用を規制してきました。電子たばこの健康影響に関する科学的データはまだそれほど多くありませんが、いくつかの研究では「紙巻きたばこよりも安全」という評判に反して、電子たばこには従来のたばこと同程度の有害性と中毒性があることが報告されています。更なる研究が待たれるものの、現時点での情報を集約すると、電子たばこは宣伝されているほど安全ではないことが示唆されます。このため、世界保健機関やアメリカがん協会などの団体は、電子たばこを従来のたばこと同じように規制することを要求してきました。
私たちは、緩い規制や無責任な広告が追い風になって従来の紙巻きたばこが普及していったことを思い出す必要があります。歴史から学ぶことがあるとすれば、潜在的に有害な製品については厳密な科学研究を行い、必要に応じて厳格な法律を制定・施行しなければならないということです。今回のFDAの発表は、若者や将来世代を保護する上で重要な一歩であり、米国は他の国々の模範ともなる素晴らしい一歩を踏み出したといえるでしょう。