
日本にお住まいの方には、2014年の日本でのデング熱の再流行がまだ記憶に新しいのではないでしょうか。ジカ熱はそのデング熱と同じく蚊媒介性の感染症であり、近縁の病気ですが、その患者数が少し前からアメリカ大陸で急増しており、この感染症に対する関心が世界中で高まっています。また、感染拡大のスピードが速く、深刻な病変との関連が疑われることから、懸念も広がっています。
1947年に名前の由来となったウガンダにあるジカ森で発見されたジカウイルスは、何十年もの間、アフリカやアジアの限られた地域の稀少な風土病として知られ、発症しても症状は軽いとされてきました。ところが現在、ジカウイルスはブラジルを始めとする中南米の国々やカリブ海諸国に広がり、パンデミックの状況にあります。ブラジルではすでに約150万人が感染したと推定されています。とても気がかりなのは、ジカ熱には現時点で治療薬やワクチンがない上に、妊娠中の感染と先天性異常児の出産との関連が示唆されていることです。また、ギラン・バレー症候群との関連も疑われています。ジカ熱の脅威から国民を守るため、米国などの諸外国では流行国・地域への渡航を控えるよう警告を発しました。
ジカウイルスがブラジルに広がったルートはまだ解明されていませんが、グローバル化した今日の社会では、旅行者が感染症に罹患するリスクや、ウイルスなどを拡散するリスクはかつてないほど高まっています。各国が感染の拡大を警戒し、旅行者と国民の健康を守るために必要な措置を取ることがますます重要になってきています。特に、今年のブラジル、2020年の日本は夏季オリンピックの開催国であり、このような大規模な国際イベントの開催地では重点的な取り組みが必要です。