
2015年8月号のネイチャー誌で、シンガポール国立大学の研究者2名が、生物精製所における殻をはじめとする水産系廃棄物の潜在的利用法についてのコメント記事を発表しました。研究者らは、カニやロブスター、エビなどの海産物の殻を精製し、有益な資源を抽出できると指摘しています。具体的には、これらの殻には農業から化粧品まで幅広く産業利用される炭酸カルシウムやキチン、タンパク質などが含まれるということです。
既存の技術と現在開発中のプロセスを組み合わせることにより、毎年世界中で発生する600~800万トンの水産系廃棄物から付加価値を抽出できる加工「パイプライン」を生み出せる可能性があると研究者らは言います。 甲殻類の多くが生息地喪失の危機に直面しており、また他の海洋生物の多くも乱獲の脅威に晒される中、甲殻類の消費から生じる廃棄物を最小限にとどめるための手立てを尽くすのは理にかなうと言えるでしょう。
近年、いわゆるバイオ燃料生産のための生物精製に高い関心が集まっています。先進国における高いエネルギー消費率を背景に、バイオ燃料は大きな注目を集めています。記事の著者らは、 水産系廃棄物から有効な成分を抽出する技術開発にも、バイオ燃料と同様に積極的に取り組むべきだと政府や研究者に呼びかけています。その重要性は世間にあまり認識されていないものの、食品廃棄物のための生物精製所の設立は、地球規模で経済的・環境的利益をもたらしてくれる可能性があります。