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機械やそのソフトウェアが示す見掛け上の知能である人工知能は、医療、輸送、製造などの分野への応用が期待されています。多くの人が人工知能は人間にとってより安全な生活環境を実現するための非常に重要なツールと認める一方、世界的に著名な科学者のスティーヴン・ホーキングなど一部の人びとは、人工知能によって人類にもたらされる恐れのある潜在的リスクを危惧しています。

Future of Life Instituteが発表した公開書簡にはホーキング博士を始めとする数多くの人物が署名し、人工知能の研究者は人工知能の向上だけに焦点を据えるのではなく、人工知能の潜在的な社会的利益が最大限に発揮できるよう努めるべきだと呼びかけています。

人工知能の脅威は今のところ理論上のものにとどまっていますが、先日ある研究グループによって人工知能を研究に取り入れることへの利点が実証されました。タフツ大学の研究者らは人工知能を発生生物学の分野に応用することに成功し、2015年6月初旬その研究成果に関する論文を発表しました。この研究では、研究者らは切断された体の一部を再生する能力を持つプラナリアに関して既に公表されている研究成果の情報を基にアルゴリズムに学習させることに成功しました。研究者らのアルゴリズムは、既報のデータを基に学習することにより、プラナリアの再生能力に関する研究成果を説明し統合する調節ネットワークを提示することができたのです。

人工知能の発展により、ロボットがいつか人間の科学者に取って代わる可能性が出てくることを恐れる人もいるでしょう。しかしタフツ大学の研究者らが示したように、現時点で人工知能は科学者が利用できるツールのひとつにすぎません。人間の科学者が人工知能に取って代わられる日は来ないかもしれませんが、とはいえ、より多くの研究で人工知能の応用が進めば、科学における人工知能の役割はますます重要になることが予想されます。