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、コペンハーゲン大学の研究者によって2つの新種の深海生物の発見が報告されました。オープンアクセスジャーナルPLOS ONEに発表されたその論文によると、これらの生物は既存の系統樹にうまく当てはまらず、分類上確立されている属と類似点はあっても明確な相違点が残されることから、著者らは新属としてデンドログランマ属 (Dendrogramma) と命名することを提案しています。

実はこの生物の標本は1986年にオーストラリア沖の海底で採取されていたもので、最近の詳細な分析によって初めて重要な発見として認識されることになりました。残念なことに、約30年前に採取された標本は不適切な方法で保存されたため、DNAが損傷を受けており、デンドログランマが固有の属であることを決定づけるために必要な遺伝子解析ができません。そのため、PLOS ONE掲載論文の著者らは、この新属の発表が他の科学者による新種の調査を後押しし、重要性が見過ごされている標本の発見につながることを望んでいます。 遺伝子解析ができればこの新属の既存の系統樹における位置が確定していたはずですが、比較的古い標本から新属新種が発見され得るという事実は研究者にとって励みになるのではないでしょうか。どのような分野で研究を続ける科学者も、過去に自分たちが採取した標本や研究データが予期せぬ形で、しかも研究そのものが終了した後何十年も経ってから他の研究に貢献する可能性があるという希望を持つことができるのです。