
携帯電話をはじめとするモバイル技術は、私たちのコミュニケーション方法やマスメディアの利用法に大変革をもたらしました。かつてはぜいたく品、あるいは主に娯楽のための機器と見なされていた現代のスマートフォンも、私たちの日常生活のあらゆる場面で役に立つ重要なツールとしてますます存在感を高めています。
近年、モバイル技術を人間の健康管理に応用する可能性が注目されています。初期の携帯機器用アプリでは、身体活動や睡眠パターン、食生活を記録するものがありましたが、最新の進化したアプリやウェアラブル端末では、体温や血圧など様々なデータを自動的にモニターすることができます。Apple社初の「スマートウォッチ」の発売が迫っていますが、健康管理のためのモバイル技術やウェアラブル端末の活用が主流になることが予想されます。
しかし、モバイル技術の健康への応用は消費者を対象にしたものばかりではありません。Science Translational Medicine誌に掲載された論文では、製作コストが34米ドルと安価ながら、18,000米ドル相当の標準的な検査機器と同様の診断検査が行えるデバイスが米国の研究チームによって開発されたことが発表されました。このデバイスでは、患者の数滴の血液を用いてHIVや梅毒の抗体検査を行うことが可能で、数分のうちに非常に正確で信頼性の高い結果を得ることができます。本デバイスの実地試験がルワンダで成功し、患者と医療スタッフ共にデバイスの単純さ、サイ ズ、速度、いずれにおいてもこの新たな技術に満足しているということです。この結果を受けて研究者らはデバイスの商品化に向けた準備を進めています。発展途上国の医療機関は、様々な疾病の診断検査の早急な実施が求められているにも関わらず、検査機器を利用できる機会が限られている状況にあります。彼らの元にこの新たな技術が確実に届けられることが期待されます。