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ワシントンDCにあるスミソニアン協会の自然史博物館は、2015年10月までの予定で現在特別展を開催しています。「Once There Were Billions: Vanished Birds of North America(その昔、何十億も存在した:北アメリカで絶滅した鳥たち)」と題されたこの特別展は、北アメリカ全土で絶滅に至った鳥種に焦点を当てています。本展の目玉は、今世紀初めて展示される鳥の「マーサ」です。 マーサは絶滅したリョコウバトの最後の生き残りの1羽として有名です。リョコウバトはかつて北アメリカで鳥類最多の生息数を誇っており、空を覆い尽くすほどのハトがひとつの群となって移動することで知られていました。

2014年9月1日は、シンシナティ動物園でのマーサの死から100年にあたる記念日です。リョコウバト最後の1羽となったマーサは、死後スミソニアン博物館に送られ剥製にされました。リョコウバトが生存の危機に晒されていることは周知されていたものの、科学者や動物学者はマーサが死に至るまでの間、生存するごく少数の野生リョコウバトを救うことはできませんでした。数十年前までは絶滅など考えられないほど繁栄していたリョコウバトが、マーサの死によって種の終わりを迎えたのです。並外れた棲息数を誇ったリョコウバトでしたが、彼らの生息域を奪い、安価な食糧源として彼らを乱獲した人間には対抗できなかったのです。

一般的な種であったリョコウバトの突然の絶滅は、絶滅危惧種を保護する法律の必要性を喚起し、近代の環境保護運動の基礎作りに貢献しました。しかしあれから100年経った今、私たちがマーサから学べることはまだあるのではないでしょうか。絶滅危惧種というと、私たちは個体数が減少している動物に焦点を当てがちですが、人間はリョコウバトのケースのように十分な個体数の動物種を数年の間に絶滅に追いやることもあるのだということを常に心に留めておくべきで す。この教訓を忘れないために、(リョコウバトプロジェクト)などの団体は、マーサの死の記念日にリョコウバトついて知識を広める機会を設けるだけでなく、人間によって絶滅していった動物について、また生物の多様性がいかに重要であるかについて、認識を高める活動を行っています。

人類のためにも、マーサの教訓をしっかりと受け止め、未来に生かしていきたいものです。