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本日3月25日、ノーマン・ボーローグ博士の生誕100周年を記念して、世界中の科学者たちがメキシコに集まります。そして今日から3日間、3月28日までBorlaug Summit on Wheat for Food Securityが開催されます。この会議は農業科学や社会政策に関わる分野の研究者たちが意見を活発に交換する場であり、また、人びとに感銘を与え続けている人道主義者としてのボーローグ博士の功績を称え、共にその歩みに思いを馳せる機会でもあります。

ボーローグ博士は1960年代に起こった「緑の革命」の父として知られています。博士はメキシコで小麦の品種改良の実践的な研究を行い、病害に強い小麦品種を作出することで、世界中の穀物の生産量の劇的な増加に寄与しました。日本で育成された小麦農林10号とメキシコ品種を交配することで開発されたこれらの新しい品種群は、人口増加による食糧難にあえぐ発展途上国の農業生産性を大幅に向上させました。ボーローグ博士の研究によって十億人が飢餓から救われたとも言われています。

農業を営む質素な家庭に生まれ育ったボーローグ博士は、穀物の不作がもたらす壊滅的な状況を目の当たりにしており、また低収量の穀物の種を播き、収穫することがどれほどきつい労働かということを、身をもって経験していました。世界を飢餓から救うことを使命とした博士の献身的な研究活動は、世界中の学術機関や政府、科学者たちから称賛されています。1970年には、ボーローグ博士の人道的活動に対してノーベル平和賞が贈られています。2009年、ボーローグ博士は他界しました。しかし世界を食糧不安から救おうという科学的探究とその精神は、世界中の科学者たちによって受け継がれています。