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オープンアクセスジャーナルの登場は、学術出版界に大きな変化をもたらしました。学術出版社や科学者がそれぞれの対策を講じる一方で、企業もまた研究成果やデータの公開の促進に関心を高めています。今年の2月初頭に、マイクロソフト社は「オープンサイエンス」に積極的に取り組む企業として新たに名乗りをあげ、自社に所属する研究者が発表する論文をすべて無料公開する方針を発表しました。マイクロソフトはWindows OSやOfficeスイートで良く知られる企業ですが、その研究部門は、技術的ハードウェアから社会学にいたるまで想像以上に幅広い分野に渡って研究を行っています。そのため、マイクロソフト社のオープンサイエンス方針は、あらゆる領域に関わる研究者にとって有益な情報や知識をもたらすことが期待されます。

さらに、マイクロソフト社の発表から程なくして、ジョンソン&ジョンソン(J&J)も学術情報のオープン化の流れを汲む動きを見せています。J&Jは、イェール大学のオープンデータアクセスプロジェクトとの間に、医療機器、医薬品、および消費者製品に関する臨床試験のデータを外部の研究者に無償で公開する契約を結んだとの発表をしたのです。

臨床試験の実施には膨大な時間と費用がかかるため、これまで製薬会社は臨床データの公開には慎重になる傾向がありました。J&Jは、臨床データが開示されることで、外部の研究者によるさまざまな観点からの検討が可能になり、これが新しい知見につながることを期待しています。このJ&Jの方針がどのような結果をもたらすのか、まだ定かではありませんが、企業のこのようなオープン化への動きは、世界中の研究者にとって非常に前向きなこととして歓迎されるべきではないでしょうか。