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信頼性のあるデータの集積なしには科学的方法は成り立ちません。科学者は得られたデータを基に、自然現象についての仮説を検証します。しかし、ともすると信頼性のあるデータが手に入らないという状況にぶつかることもあります。こうした困難に直面したときに研究を進めるためにも、科学者には「独創的な」方法でデータを集める機転が求められます。

2013年8月発行のFrontiers in Ecology and the Environmentに発表された論文では、ハワイ諸島周辺の太平洋に生息する野生魚の個体群を特定するために、興味深い手法が取り入れられています。20世紀前半の45年間にかけての沿岸魚の個体群に関する政府や市場のデータが手に入らなかったため、Kyle Van Houtan、Loren McClenachan、John Kittingerの3人の研究者は、レストランのメニューをデータの収集源として利用することを思いつきました。

“Seafood menus reflect long-term ocean changes”と 題された論文で、Van Houtanらは154の個人コレクションから376のメニューを集め、「歴史生態学的」調査におけるデータとして使用しました。これらの科学者たちは、 メニューに載っている料理に使われた魚の種類から、メニューが書かれた当時、ハワイで漁獲された魚の個体群に関する情報を収集できるとしたのです。

本論文のデータによると、1930年代後半から1970年代にかけて、バラエティに富む近海魚を含むメニューから、大 型の遠海魚中心のメニューへと変化があったことが示唆されました。レストラン顧客の嗜好の変化が調理される魚の種類の傾向に影響を与えたことも考えられますが、著者らは、魚介類のメニューがこの時期における近海魚の個体数減少の指標になることは、他の社会経済的データ(水揚げや市場に関するデータなど)によっても裏付けられると主張します。

思いもよらない収集源から、研究の重要データが見つかることもあるということは心に留めておくべきでしょう。旅行先で観光客が買い求める土産物やがらくたでさえも、特定の土地に関する貴重なデータを提供することがあるのです。確固な研究結果は、様々な角度で収集されたデータによって裏付けられるものです。 あなたが次回論文を準備する際には、データの「フルコース」を大いに活用してください。