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- K.R., エディター

GoogleやFacebookなどの巨大テック企業のサービスは、今でも多くの一般市民の支持を集めています。一方で、最近は偽ニュースの拡散をはじめとするスキャンダラスな側面が明らかになり、各国の政府や議員の厳しい目にさらされています。このような会社に求められる企業責任が高まれば、ニセ科学の脅威に対抗でき、学術出版業界に変革をもたらすこととなるでしょうか。 巨大テック企業は今、コンテンツの管理責任をもっと負うべきだという圧力にさらされていますが、それが実行されれば、自由に科学情報を発信できる現在のオープンな情報流通モデルに変化が起きるでしょう。

Googleは2004年に「Google Scholar」という学術的な検索エンジンを公開して、学術出版の世界に参入しました。Google Scholar は研究を可視化し、アクセスしやすくしたと高く評価される一方で、検索結果において本格的な研究を犠牲にしてポピュラーサイエンスを多く表示していたり、ニセ科学情報を掲載していると批判されています。Facebookには、ナショナルジオグラフィックの公式サイトからIFLScienceのような科学の面白さを伝えるサイトまで、多数の科学関連ページが存在し、これらのページは数百万人のフォロワーを獲得しています。これらのページは目立つビジュアルとキャッチーな見出しでユーザーの興味を引きつけますが、科学的な情報はそれほど多く含まれていません。その一方で、有害で明らかにニセ科学のページもたくさんあります。例えば、最近、あるキャベツ混合ジュースに若返り効果やがんを治す作用、さらには同性愛者を異性愛者に変える作用があると主張するページが登場しました。このジュースは、激しい下痢を引き起こすことで、体の悪いものを排出するとされていますが、科学的な根拠は全くありません。それにもかかわらず、考案者のFacebookページにはフォロワーが数千人もいます。他のニセ科学のページでも同じような現象が見られます。

これまでGoogleとFacebookは、コンテンツの内容に責任を負うことを避けてきました。しかし、両社を取り巻く状況は変化しています。近年、裁判所は、一般市民が利用する情報を積極的または受動的に管理するテック企業に対して、「大きな力には、大きな責任が伴う」と勧告する判決を下しています。一般人がGoogleなどのプラットフォームからアクセスする科学情報について、対処すべき問題があるのは明らかです。博識で知られる英国の政治家ディック・タバーン氏は、ニセ科学が蔓延する現在の状況について、「科学に基づいた進歩だけでなく、民主主義の文明的な根幹をも脅かす不合理性を秘めている」と批判しています。検索エンジンでは、撤回された論文や間違った方法論の研究を含めて、科学と称するものすべてが原則として永遠に残ってしまいます。その点を考慮すれば、検索エンジンを提供する企業に一定の責任があることは確かです。

学術出版の直面している問題に、Google規模のソリューションを提供するというアイデアは、目新しいものではありません。数年前、Googleが「Google Science」という新しいサービスを開発中であることが明らかになりました。このサービスでは、複数の科学ジャーナルが発行され、「優秀なレビューアー」チームがそのコンテンツを管理すること、また、立ち上げ当初は、他の科学者の紹介がなければプラットフォームに参加できないようにして、ニセ科学が入り込む可能性を減らすとしています。このプロジェクトはまだ実現していませんが、検索エンジンに登録され、検索結果として表示されるようになる前に、学術論文を選別する可能性を示唆しています。これは、一言で言えば論文の「ホワイトリスト」を作成するプロジェクトと言ってよいでしょう。

一連のスキャンダルによって失われた信頼を取り戻すために、巨大テック企業は最近、自社製品に潜在する有害性に目を向け始めています。Googleはニセ科学に対して断固たる措置を取り始めており、この2月には、自閉症とワクチンの関連性やフッ素添加水とがんの関係を主張する記事や、気候変動に関する議論を国際的な陰謀とする記事を頻繁に掲載する「Natural News」というサイトの140,000ページ以上のコンテンツを検索エンジンから削除しました。GoogleとFacebookは最近、偽ニュース対策として「Trust Project」に参加し、ユーザーが信頼できる情報源からの情報かどうかを判断できるようにしました。また、両社は、独自のファクトチェック機能を導入し始めています。こうした努力は立派ですが、これまでのところ大きな取り組みは実施されておらず、さらなる対策が必要です。ただ、ニセ科学の発信者に逆風が吹き始めているのは確かなようです。

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