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- A.S., エディター

総説は独自の研究を報告するのではなく、ある分野における最近の重要な研究結果を要約するもので、研究において有益なキュレーターの役割を担うことが一般的に知られています。 また、総説は原著論文よりも引用されることが多いと広く考えられており、この現象を数値化しようと複数の研究が行われてきました。これまで、35の科学分野において、総説は原著論文よりも平均して3倍多く引用されていることが報告されています。また、最近American Sociological Reviewに掲載された論文では、社会科学を含むより多くの研究分野で、総説論文と「学術的な注目」との関連性について調査が行われました。

この論文では、多様な分野にわたる51のレビュージャーナルの出版社であるAnnual Reviewsが発表する総説で引用された論文について、将来の被引用数が40%近く減少する可能性があると結論付けられました。いかに被引用数を増やすかが関心の的になることが多いため、総説が論文の生涯引用数に与えるマイナス影響は、一見好ましくないように思われます。

しかし、著者らは、こうした負のプロセスこそが科学知識の形成過程を表しているとも指摘しています。膨大な数の研究の中から共通点と重要なテーマを突き止め、統合し、分野を結び付け、下位分野を新たに定義することさえあるのです。それがひいては全く異なる科学コミュニティの関心を寄せ集め、将来の研究を導く重要な役割を果たします。

なお、この研究の1つの大きな限界は、調査した論文がいずれもAnnual Reviewsが発行する学術誌のものであることで、注意が必要です。実際のところ、2014年に実施された別の研究では、少なくとも生物医学研究と臨床研究の分野で、総説での引用と将来の被引用数の減少には何の相関性もないことが明らかになっています。総説が論文の被引用数にどの程度影響を与えるかは、研究分野によって大きく異なる可能性があり、この関連性を明らかにするにはさらに研究が必要です。

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