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- A.S., エディター

プレデタージャーナルとプレデター出版社は、学術コミュニティの公正性を脅かし続けています。プレデタージャーナルの存在はよく知られていますが、そのようなジャーナル・出版社を厳密に定義するのは困難でした。「プレデター出版社」という言葉は2010年から使われてきましたが、一致した定義が得られたのは2019年末になってからでした。 複数国の著名な研究者と出版社で構成されるグループによると、「プレデタージャーナルおよび出版社とは、学問を犠牲にして自身の利益を優先し、虚偽情報または誤解を与える情報、編集・出版のベストプラクティスからの逸脱、透明性の欠如、強引で見境のない勧誘慣行を特徴とするジャーナル・出版社」とのことです。

この定義のもと、学術機関や研究者はプレデタージャーナル問題への対応を進めたいと考えています。しかし、体系的な予防措置は今なお存在しないため、著者は自ら情報を収集し、警戒し続けなければなりません。前述の定義にある明らかな不誠実行為からプレデタージャーナルを容易に判別できるとは限らず、特に虚偽情報または誤解を与える情報を識別するのは難しい場合もあります。プレデタージャーナルが用いる戦略の1つは、著名なジャーナルに似た名称を意図的に使用することです。

今年、評判の高い、世界最大規模の学術研究出版社であるWiley社は、この策略のターゲットにされた同社のジャーナルに関する通知を出しました。新たに発行されたThe Journal of Orthodontics and Craniofacial Researchという名称のジャーナルが、Wileyが発行しているジャーナル、Orthodontics & Craniofacial Researchと誤認される可能性があるため注意するよう著者らに呼びかけたのです。この新しいジャーナルの出版社であるGavin Publishersは、Wileyのジャーナルに定期的に投稿している研究者に対して論文の投稿を勧誘していたと伝えられています。

研究論文は通常、複数の出版社から同時に査読を受けることは認められていないため、違う出版社に誤って投稿すると、掲載料と論文の両方を失う可能性があります。そうした損失を避けるために、選んだジャーナルの正当性を慎重に検証することが著者に強く求められます。この検証に役立つプレデタージャーナルの名称リストが作成されており、知っておくべき注意点のチェックリストもありますが、残念ながらそれらのいずれも包括的な対策とは言えません。プレデタージャーナルと闘う効果的な方法が見つかるまで、新しいプレデタージャーナルと欺瞞的な策略に常に注意を払う必要があります。

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