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- G.A.,シニアエディター

最近、Elsevier社のAin Shams Engineering Journalは、著者が研究に無許可のソフトウェアを使用していたことが判明したため、2本の論文を撤回しました。ダムの決壊について調査した2本の論文では、Flow Science社が開発した汎用3次元熱流体解析ソフトウェア「FLOW-3D」が使用されていました。ソフトウェア開発者からの苦情申し立てにより編集部が調査を行った結果、著者が適切なライセンスを取得せずにソフトウェアを使用していたことが判明しました。 同誌の論文撤回通知では、論文投稿の基本的な条件として、ソフトウェアを使用する際には適切にライセンスを取得するなど、研究が知的財産権を侵害してはならないことが強調されています。

2本の論文撤回により、学術出版において適切な著作権遵守の必要性に関する懸念が高まっていることが浮き彫りになりました。現在では盗用や倫理違反に加えて、ソフトウェアの無断使用も論文撤回につながります。ジャーナルや出版者は知的財産権に対してますます警戒を強めており、遵守違反は深刻な結果を招く可能性があります。研究者は、プロプライエタリソフトウェア、生成AI、BioRenderのような画像作成ツールなど、論文執筆に使用する全てのソフトウェアやツールのライセンスに注意する必要があります。

今回のケースは著作権法と学術界の間で続く緊張関係を明らかにしています。研究者が学術論文へのアクセスを広げるよう求める一方で、出版者はコンテンツを有料で提供し続けているため、研究者が自由に研究成果を共有することが難しくなっています。両者の対立は著作権改革について、特に研究者が自分の研究を公表する権利について、法的・倫理的な議論を引き起こしています。一部では、出版社の許可なく自身の研究を公表できるよう、「二次出版権」の設定を求める声もあります。

学術界の状況が変化し続ける中、研究者は使用するツールやリソースに対して責任を持たなければなりません。研究の健全性・公正性は、正確な結果や堅実な方法論だけでなく、著作権や知的財産権に対する尊重の上に築かれます。適切にライセンスを取得することで、論文撤回を回避し、学術研究の信頼性と信用を維持することができます。

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