特集記事

- G.A.,シニアエディター

学術研究においてデータは貴重な資産です。しかし、ほとんど利用されていない「ダークデータ」と呼ばれる大量のデータが存在します。ダークデータとは、収集されたものの分析や意思決定には使用されていないデータです。研究室、研究機関、研究者個人のハードドライブに保存されていますが、整理されていない、構造化されていない、収集時に重要でないと判断されたという理由から見落とされている、もしくは忘れ去られています。

ダークデータに関する課題は、その潜在的な価値にあります。研究者がデータを積極的に使用していなくても、特定分野の知識を向上させる重要な洞察を含んでいる可能性があります。例えば、不完全とみなされた、または結論に至らないと判断された実験データでも、さらに詳しく調べることで有益なパターンが見つかる可能性があります。また、過去のプロジェクトで収集した大量のデータセットを高度な方法や技術を使用して再分析することも可能です。しかし、このデータは適切に管理されておらず、メタデータが欠如しているため、多くの場合アクセスできずに閉じ込められた状態になっています。

ダークデータが蓄積される理由はさまざまです。最新の研究ツールやセンサーによって膨大な量のデータが生成されますが、研究者がそのデータの整理や分類に追いついていないことが大きな理由となっています。また、研究結果を早く発表し、目の前にある目標に集中しなければならないというプレッシャーから、現在のプロジェクトに直接関係ないと思われるデータの管理や保存が後回しになってしまうこともあります。その結果、貴重なデータセットが未検証のまま放置され、その価値が認められないままになっています。

ダークデータの問題に取り組むためには、研究コミュニティの文化変革が必要です。研究者や研究機関は、データの潜在能力を最大限に引き出すために、データの整理、共有、アクセシビリティへの対策を優先する必要があります。データを保存・管理するための優れたシステムを開発し、収集したすべての情報に長期的な価値を見出す考え方を育むことで、学術界はダークデータの影響を減らし、貴重な洞察を無駄にしないようにすることができます。

英語版はこちら