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- G.A.,シニアエディター

米国国立衛生研究所(NIH)は、論文掲載料(APC)に上限を設ける方針を打ち出しており、研究者が成果を共有する仕組みを変える可能性があります。Chemical & Engineering Newsによると、2025年9月に締め切られたNIHの情報提供要請では、1論文あたりのAPCを2,000ドル、3,000ドル、または6,000ドルに制限する案や、出版費用を助成金の一定割合に基づかせる案などが検討されました。 この動きは、昨年APCが6.5%上昇したことを背景としており、一部の学術誌が小規模な研究室の予算を超える高額な掲載料を請求していることから、出版社による過度な利益追求に対する懸念が高まっています。APCに関する決定は、NIHが幅広い課題に直面している中で下されたものであり、一度停止した後に再開された助成金が最高裁判所の判決後に削減される可能性も課題に含まれています。

上限設定の賛成派は、オープンアクセス出版における過度な料金徴収を抑制するためには、上限は必要不可欠と主張しています。記事の中で引用された生化学者Jeremy Berg氏は、一部の出版社がAPCから「多額の収益を得ている」と指摘しています。しかし、6,000ドルの上限では、NIHの助成を受ける研究者が一般的に利用している学術誌の約10%が対象外となり、掲載先の選択肢を狭める可能性があります。一方で、情報科学者のStefanie Haustein氏などの反対派は、上限設定により研究者は有料ジャーナルに投稿せざるを得なくなり、結果として、NIHが2025年7月1日から導入した即時オープンアクセス義務化が損なわれると警告しています。

STM協会などの団体に代表される出版社は、APCの上限設定は「市場を歪める」として反対の立場を取っています。一方で、ゲイツ財団がAPCへの資金提供を完全に停止するという決定は、APCの上限に対する異なるアプローチとして注目されています。特に化学や生物医学分野の研究者にとって、APCの上限は、高騰する出版費用や予測できない助成金の更新によって既に厳しくなっている研究予算をさらに圧迫する可能性があります。

NIHの決定は近日中に発表される予定で、オープンアクセスの目標と財政責任を両立させるための先例になるとみられます。学術出版の方法や方針などの変更に備え、低コストのジャーナルを優先したり、機関から支援を求めたりするなど、この変化し続ける状況を乗り越える準備をする必要があります。

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