- G.A.,シニアエディター
これまで長らく、科学論文は主として人間が読み、理解するための叙述として最適化されてきました。論文は、要旨、序論、方法、結果、図、表、参考文献などから構成され、必要に応じて補足資料が添付されます。ジャーナルは最終的に、採択された論文をPDFなどの出版形式に変換しますが、著者が投稿する研究成果は、もはや単なる文書にとどまらず、ますます複雑なものになっています。 現代の研究では、膨大なデータセット、高度な計算処理ワークフロー、バージョン管理されたコード、機械学習モデルなどが生成される一方で、研究者が文献の検索やその内容の統合にAIシステムを利用する機会も増えています。そのため、論文は単独で完結する叙述というよりも、相互に関連する研究成果物をつなぐインターフェースになりつつあります。NISOのJournal Article Tag Suite(JATS)のような標準規格は、学術論文の内容を構造化し、機械可読な形式で表現することを可能にしています。また、FAIR原則は、研究データを、「発見可能(Findable)」「アクセス可能(Accessible)」「相互運用可能(Interoperable)」「再利用可能(Reusable)」なものにしておくことの重要性を強調しています。
このような変化によって、将来の論文は、人間と機械の双方を対象として書かれるようになる可能性があります。構造化抄録、標準化された用語、永続的な識別子、機械可読なメタデータ、そして論文中の主張とそれを裏付ける証拠を明示的に結びつけることで、計算機システムは従来のテキスト検索よりもはるかに詳細に科学文献を探索・解析できるようになるかもしれません。AIシステムは、特定のキーワードを含む論文を単に検索するだけでなく、ある研究結果を、その根拠となった実験データセットまで追跡し、使用された統計手法を特定し、関連研究と比較したうえで、その当初の結論が後続研究によって支持されたのか、あるいは疑問を呈されたのかを評価できる可能性があります。著者にとってこれは、今後、研究の明瞭性や再現可能性が、研究内容をどれだけうまく説明できるかだけでなく、その研究の基盤となる研究成果物がどれだけ効果的に構造化され、相互に接続されているかにも左右されることを意味するかもしれません。
論文そのものの変化に伴って、査読も変化していく可能性があります。自動化システムはすでに、統計的な不整合、画像の改変、剽窃、報告情報の不足、不適切な文献の引用など、論文に潜在するさまざまな問題のチェックを支援できるようになっています。さらに高度なシステムでは、論文が人間の査読者に届く前に、研究方法や計算処理に関する標準化されたチェックを実施できるようになる可能性があります。しかし、こうした自動化が進んでも、人間による査読が必ずしも不要になるわけではありません。むしろ、査読者の役割は、実験によって検証しようとしている問いが重要なものか、その解釈に生物学的な説得力があるか、そして得られた証拠がより広い科学的主張を本当に裏付けているかといった、依然として自動化が難しい問題の評価へと移っていく可能性があります。したがって、将来的に査読者は手続き上の誤りを見つけることに費やす時間を減らし、科学的判断を評価することにより多くの時間を費やすようになるかもしれません。
今後研究者にとって、論文の準備には説得力のある叙述を書くことだけでなく、再現可能な研究パッケージを構築することも含まれるようになる可能性があります。従来から記載していた実験情報に加えて、使用したソフトウェアのバージョン、解析環境、データの来歴、モデルのバージョン、試薬情報、計算上の依存関係なども記録する必要が生じるかもしれません。一方、データセット、コード、解析が論文の出版後も更新され続ける可能性があるなかで、ジャーナルはどの時点のものを「正式な記録版(version of record)」とするのかを改めて考える必要があるかもしれません。PDFが近いうちになくなる可能性は低いものの、より豊かな科学的成果を捉える一つの表示形式にすぎなくなるかもしれません。将来の研究論文は、研究内容を説明する叙述であると同時に、データセット、計算ワークフロー、そして機械可読なエビデンス・マップにもなる可能性があります。そうなれば、研究成果を出版する方法だけでなく、科学的知識が発見され、評価され、再利用される方法も変わっていくでしょう。
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