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- G.A., シニアエディター

英国のケンブリッジ大学出版局は、その長い歴史を通じて、研究者に政治や科学に関する論争について議論する場を提供してきました。ところが2017年8月、出版局が検閲を行い、学術研究に対する自由なアクセスを制限したことから、出版局自体が世界的な論争の的となりました。 同大学出版局はプレスリリースの中で、現代中国に関する学術誌「チャイナ・クォータリー」に掲載された複数論文へのアクセスを遮断するよう中国の輸入業者から要請があり、それに従ったことを認めました。検閲対象となった論文は、文化大革命や天安門事件など、中国政府にとって微妙な問題を扱っていました。

ネット上では上記の発表に対する非難の声が相次ぎ、同出版局の出版物のボイコットを呼びかける研究者も現れました。「公正な研究活動よりも、ビジネス上の利益を優先しているのではないか」との強い抗議を受け、同出版局はその後すぐにアクセス遮断の措置を撤回し、世界中の研究者に出版物へのアクセスを提供する姿勢を強調したプレスリリースを改めて発表しました

歴史を振り返ると、文化にも科学にも、重苦しく暗い時代がありました。科学者だけでなく政府も、自ら進んで過去を正視し、歴史から教訓を学ぶ必要があります。そのため、デジタルツールは、情報へのアクセスを制限するためではなく、情報へのアクセスを更に拡大するために使用されるべきです。そうすれば、より多くの人が価値ある教訓を学ぶことができます。

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