
- K.R., エディター
この7月に自然言語処理 (NLP) を応用した興味深いサービスが登場しました。NLPとは、人間が使う言葉 (自然言語) をコンピューターが理解できるようにする技術のことで、この技術が発展すれば、科学と医療に革命をもたらすだけでなく、出版が幅広く発展する可能性があります。カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くスタートアップBiozやGoogleが最近公開したNLPを用いたサービスは、科学論文の出版の迅速化と効率化に役立つと期待されています。
Biozの共同創立者であるカリン・ラクミとダニエル・レヴィットは、世界中の研究者が同じ問題を抱えていることに気づきました。研究計画を立てるとき、研究者は気が遠くなるほど膨大な量のデータから最適な選択肢を抽出する必要があります。一般的な論文検索システムでは、任意のキーワードを入力すると、そのキーワードを含む論文が関連度の高い順にリストアップされます。研究者はリストにある論文を一つひとつチェックし、良い点と悪い点を評価して、自分の研究内容に最も適している手順や装置を選択しなければなりません。このプロセスは時間がかかり、骨の折れる作業です。
Biozの検索エンジンは違います。自然言語処理を用いて、多数の科学論文から研究者が欲しい情報を見つけ出し、検索結果を簡潔にまとめてくれます。また、類似する実験で使用された製品がランキング表示されるので、「自分の実験でその製品が機能する確率を予想する」(レヴィット氏)ことができます。レヴィット氏によれば、「以前は不可能だった方法でより良い選択が行えるようになり、研究者は大変満足している」と言います。現在世界40カ国で3万人以上のユーザーがBiozのベータ版を使用しています。
Biozの発表と同じ日に、Googleはクラウド自然言語APIを公開しました。Biozのようなデベロッパーは、このAPIを使うことにより、アプリに自然言語処理を組み込むことができます。現在の対応言語は、英語、スペイン語、日本語の3言語です 。世界中のデベロッパーがGoogleの新しいAPIを用いてアプリ開発を行えば、これまで人間にしか解決することができなかった様々な問題がコンピューターで処理できるようになるでしょう。
これまでのところ、NLPによるイノベーションの大部分は、ソーシャルメディアやターゲティング広告の分野で起きています。しかし最近では、法律相談や認知障害の早期発見・モニタリングにNLPを活用する例も見られるようになってきました。自然言語処理技術の活用は急速に広がっており、2021年には約160億ドルの市場規模に成長する見通しです。今後数年間に、私たちの日常生活で、NLPがますます重要な役割を果たすようになるのは間違いありません。