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- K.N., シニアトランスレーター

取り巻く環境が国際化する中、英語コミュニケーション能力の向上を目指しながら医薬分野で活躍されている方々、また今後医薬分野を目指される方々にとって、現在は学習ツールが多様化し、便利に使える時代になりました。以下に、オンラインで利用可能ないくつかのリソースとそれぞれのメリットを紹介します。

学術雑誌 学術英語のスキルアップを目指す方々にとって、一流医学誌は最高の自習教材です。トップレベルの学術誌で使われている構成、単語、言い回し、および全体的なスタイルをお手本にすることにより、より高いレベルの学術英語を身につけることができます。また、書き言葉を学ぶことは、学術英語に限らずあらゆるライティングの基本であるスペル、句読法、文法などをマスターすることにもつながります。
書き言葉の英語は複雑であり、習得するのは簡単ではないかもしれませんが、参考になる論文を探すのに苦労することはないはずです。科学的成果が次々と生み出され、オープンアクセス運動が広がりを見せる中、あらゆる分野の数多くの科学論文がオンラインで読めるようになりました。医学分野では、The New England Journal of Medicine (NEJM)が最も権威ある学術誌とされています。NEJM のウェブサイトには膨大なアーカイブが蓄積されており、出版から6カ月経った論文は、無料で全文閲覧が可能です。

ポッドキャスト / YouTube 今では様々な分野のポッドキャスト番組を無料で聞くことができ、医学分野ではPodMedNEJMのポッドキャストがよく知られています。YouTubeには、口頭発表の動画や教育ビデオを含む、大量の動画が投稿されています。口頭発表の動画は、ボディーランゲージや話し方を含めたプレゼンテーションスキルを身につけたい人にはとても参考になります。
このようなプラットフォームで話し言葉の英語を聞くことにより、医薬分野の専門家がどのような用語を使っているかだけでなく、用語の発音も学ぶことができます。特に、発音の難しい専門用語や、頭字語 (例えば、「XELOX」や「MRSA」などの略語を単語として読むのか、アルファベットを一文字ずつ読むのかが分かれば、不定冠詞を使い分けることもできます)、数字 (例: 「1995–2005」「153,276 individuals」「4.07 × 10-3」)、測定値 (「a blood pressure of 120/75」「100 cm3」「25 m/s」)、日本語と英語で発音が異なる単語 (「genome」や「magnesium」) の読み方を覚えるのに役立ちます。つまり、英語の語彙力が高まると同時に、聞き取り力と発音力の向上も期待できます。
ポッドキャストやYouTubeには、ビジネス英語電子メールや電話で使う英語などの、特定の目的に向けた英語学習コンテンツも用意されています。

MOOCs / OpenCourseWare 大規模公開オンライン講座 (MOOC) では、幅広い分野のコースを英語で学ぶことができます。MOOCのプロバイダーの一つであるCoursera (コーセラ)では、スタンフォード大学やジョンズ・ホプキンス大学などの名門大学の医学やその他の分野のコースをオンラインで無料受講でき、世界中1,500万人の受講者を集めています (2015年時点)。大学レベルのコースを受講することで、科目の知識だけでなく、書き言葉および話し言葉の英語力を磨くこともできます。
OpenCourseWare (オープンコースウェア) とは、大学の教材をオンラインで共有する活動です。マサチューセッツ工科大学をはじめとして、参加する大学が徐々に増えています。大学で学生が実際に使っている教材にアクセスすることができるため、科学英語を習得するツールとしても非常に効果的です。