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- G.A., シニアエディター

オープンアクセス出版の支持者は、従来型の出版社をしきりに批判しており、ボイコットを呼びかけた例もあります。これまで議論の多くは平和的に行われてきましたが、2015年11月、自分たちの分野における研究成果へのオープンアクセスを支持する一部の科学者らの間で不満が頂点に達しました。

主要メディアのFortuneは、教育中心の報道サイトInside Higher Edで報じられた劇的な出来事を取り上げました。言語学ジャーナルLinguaで、編集者6名と編集委員31名全員が辞任するというのです。彼らは、Linguaを出版するエルゼビアがオープンアクセスジャーナルの数をなかなか増やさないことに業を煮やした上、エルゼビアが図書館に課すLinguaの購読料の高さにも腹を立て、2015年12月31日付けで辞任する意向を表明しました。さらに、Linguaの職務を辞したのち、独自のオープンアクセスジャーナルを創刊する意向を発表しました。

Linguaが世界最大級の学術出版社の後ろ盾を持ち、かつ定評のある学術誌であることを考えると、世界中の図書館の棚から完全に姿を消すことはないでしょう。ただ、今回の出来事は、読者の要望に応えられない学術誌の将来に疑問を呈していると言えます。新興のオープンアクセスジャーナルは、 実績と定評のある学術誌とやがて肩を並べ、さらに主役の座に躍り出ることができるのでしょうか。一斉辞任やボイコットのような行為は、実際に大手出版社の経営手法に変革をもたらす影響力があるのでしょうか。エルゼビアとLinguaが2016年にどのように対応するのかは見ものです。そして、辞任する編集委員らが自分たちの学術誌を首尾よく創刊できるのかを見るのはそれ以上に興味深いでしょう。