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- G.A., シニアエディター

今年10月、Nature誌にて世界中の研究者にとって単純でかつ根本的な問題に焦点を当てた特集が組まれました。インデックス誌や出版論文のデータベースを検索する際に、同姓同名の研究者を識別することは困難です。この問題は、ジャーナルによって著者の名前の省略方法が一貫していないことによってさらに複雑化しており、また人口の大半が限られた姓を名乗っている国の著者にとっては特に難しい問題です。

この問題の解決となり得るサービスが、Open Researcher and Contributor Identification (ORCID)により展開されています。ORCIDは学術出版における著者識別の問題を改善することを目的として2010年に設立された非営利団体です。ORCIDはどの寄稿者がどの出版物の著者であるかを巡って起こり得る混乱を軽減するため、著者がそれぞれの出版物に対して固有のIDを「付ける」ことができるデジタル識別子を考案しました。ORCIDの識別子により、著者の各出版物における功績が認められるだけではなく、その出版物の読者は著者のIDが認証されていることを確認することができます。

当然ながら、ORCIDのプロジェクトチームはユーザーの個人情報の保護を確実にするための適切な手段を取っていると明言しています。しかし同時に、研究者には個人情報の保護だけでなく、個人情報がどのように共有されているかを管理するという基本的ニーズがあることもORCIDは認識しています。

研究者が自分の出版物にIDを付けるツールとしてORCIDの識別子が国際基準となるかどうか、見極めるのにはまだ時間がかかりそうです。変化の激しいIT業界では、当然新たな方法が提案され、学術出版社や研究者の注目を引こうと競い合うことでしょう。しかし、ORCIDのチームがこのように、研究者の功績が適切に識別されない恐れがあるという重要な問題に焦点を当て、その解決に向けた取り組みを行っている事実は称賛に値します。


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