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- G.A., シニアエディター

2010年8月から2人の科学者が運営している『リトラクション・ウォッチ』は、撤回された科学論文について公表し議論するブログです。論文撤回という観点から科学出版プロセスのからくりを明らかにすることを目的として立ち上げられたこのブログは、様々な科学分野における論文撤回を取り上げてきました。これまでブログでは、図の誤表記から自らの論文を査読したことが疑われるケースに至るまで、あらゆる理由で撤回された論文が報告されています。 徐々にブログの熱烈なファンが増えており、サイトへの訪問者数は1,500万人を超えています。さらにブログの創設者らは、論文撤回についての豊富な知識を生かして執筆した自らの総説を2014年、Journal of Microbiology and Biology Education発表しました。

2014年12月には、ブログの創設者らに対してアメリカで最も大きな個人慈善基金団体のひとつであるマッカーサー基金より40万米ドルの助成金が授与されました。この助成金を元手に、『リトラクション・ウォッチ』の創設者らは大手ジャーナルによる論文撤回を監視するシステムを構築し、撤回の原因の解析に役立つ関連データのデータベースを作る予定です。

マッカーサー基金が公益メディアに対して大きな資金提供を行っていることを考えると、『リトラクション・ウォッチ』への支援も不思議ではありません。助成金を受けた『リトラクション・ウォッチ』が科学出版プロセ スに関する貴重なデータを公表することで、研究に積極的に取り組み成果を発表している研究者だけでなく、一般市民も、科学研究出版に対する理解が深まると いう恩恵を受けることを期待したいところです。


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