特集記事


- G.A., シニアエディター

オープンアクセス運動の支持者は、学術論文をインターネット上で無料公開することは潜在読者の数を増やすことになり、ひいてはその論文の被引用回数を引き上げることにつながると唱えます。しかし、彼らの主張をそのまま受け入れる前に、その根拠となる数字を確かめることも大切です。

オープンアクセスの価値を測ることを目的として、Academia.eduと提携する研究者のグループがAcademia.eduのウェブサイトに掲載された論文の引用頻度の分析を行いました。Academia.eduは科学者用のソーシャルネットワーキングサイトとして、世界中の研究者たちが論文を共有し、お互いの研究についてコメントや意見を交換し合う場を提供しています。現在ウェブサイトには2千万人以上のユーザーが登録され、5百万本を超える論文がアップロードされています。サイトへのアクセスにはユーザー登録が必要となりますが、誰でも無料で登録することができます。

Academia.eduの研究者らは、44,689本の論文を含む大規模なサンプルを基に、Academia.eduで共有された論文と、それらの論文と同じジャーナルに掲載されたもののAcademia.eduには共有されなかった無作為に選ばれた論文の被引用回数を比較しました。その結果、論文掲載から5年の時点において、Academia.eduで共有された論文は、インターネット上で無料公開されていない同等の論文よりも被引用回数が平均83%多いことが分かりました。さらに、他のサイトで無料公開され、かつAcademia.eduで共有されている論文は、他のサイトで無料公開されているもののAcademia.eduでは共有されていない論文に比べ、平均75%も被引用回数が多いことが明らかになったのです。

これらの結果は、オープンアクセスジャーナルに論文を掲載する潜在的メリットを明確に示していますが、同時にインターネット上での「見つけやすさ (discoverability)」の重要性を強調しているとも言えるでしょう。論文は他の研究者によって発見され、読まれることにより、引用される可能性が高まります。オープンアクセス出版社にとってもオープンアクセスに論文を発表する個々の研究者にとっても、論文の「見つけやすさ」を向上し読者の数を増やすためにAcademia.eduのようなサイトを利用することは大きなメリットになりそうです。


関連特集記事
こちらも合わせてお読みください: 論文掲載後のピア・レビュー » ピア・レビュー:「推薦査読者」にふさわしい人物とは? » ピア・レビュー:「推薦査読者」にふさわしい人物とは?(続編) »