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- G.A., シニアエディター

近代の科学的手法の柱の一つであるピア・レビューが、全ての研究者の間で尊重されるのは当然のことだと誰もが思うかもしれません。ところが残念なことに、 論文の投稿過程の弱点を突いて、自らの論文が好意的なピア・レビューを受けられるよう操作する研究者がいることが最近表沙汰になりました。

論文投稿の際、著者に「推薦査読者」の記載を求めるジャーナルの仕組みを悪用した研究者についての論説が、2014年後半、Nature誌に掲載されました。例えば、推薦査読者として、実在する研究者の名前と共に偽りのEメールアドレスを記載することで、著者自身もしくは共謀者がピア・レビューの要請を横取りしていたケースがありました。

このような不正が明らかになったことを受けて出版倫理委員会(Committee on Publication Ethics;COPE)は、 疑わしいピア・レビューを特定するため内部調査を行い、監視を怠らないよう出版社に呼びかける公式の見解を発表しました。

そしてオープンアクセスの大手出版社、BioMed Centralが内部調査を行ったところ、ピア・レビューに関して少なくとも43件の不正が行われたことが明らかにされ、これら問題となった論文は撤回されました。さらに他の大手出版社の調査でも同様のケースが発見され、最近約170もの論文がピア・レビューにおける不正のため撤回されたのです

論文を発表しなければならないという非常に大きなプレッシャーに研究者が晒されていることを考えると、彼らが論文掲載の可能性を高めるために非道徳的な方法に頼りたくなる気持ちも分からなくはありません。それにしても、明らかになってきたピア・レビュー詐欺の件数は、憂慮すべき規模にまで広がっています。出版社がピア・レビューにおける不正のリスクを認識し始めた今、彼らが論文出版システムのほころびを繕うために取る積極的な対策により、読者が再び、掲載論文はすべて適切なピア・レ ビューを経ているという確信を持てるようになることを期待しましょう。


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