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- C.L., エディター

情報伝達の術として、電子媒体やインターネットが紙媒体に取って代わる時代を迎えています。紙から電子への移行によって最も打撃を受けているのが新聞で、最新の情報を即時に提供することのできるテレビやインターネットに大きな遅れをとっています。

しかし、新聞と同じ道を学術ジャーナルが辿らねばならないという訳ではありません。学術出版界は紙媒体の崩壊という事態に対応し、出版におけるデジタル革命を受け入れるべく、徐々に体制を整えています。著者から掲載料を徴収することによってコンテンツを無料公開するオープンアクセスジャーナルは、この学術出版会のデジタル革命の最前線を担う存在です。著者自身が出版経費をすべて負担するという考え方に対し、抵抗感を抱く研究者がいまだに多いことは事実です。しかし、オープンアクセスという形態を選択するジャーナルが増え続ける中、また出版社にとっての顧客が読者から著者へと移行する中で、出版社はオープンアクセスに対応するためマーケティング戦略の方向転換を始めています。今後、出版社はさらに多くの著者をオープンアクセスジャーナルに呼び込むために、 掲載プロセスの迅速化、リジェクト論文の査読と再投稿プロセスの整備、論文体裁と投稿手続きの簡素化などの導入を進めていくことが考えられます。さらにオンライン出版を利用する研究者は、これまで冊子体であるがゆえに制限されていた補足資料の付加、特にビデオや動画、カラー図などのマルチメディアコンテンツの付加が可能になります。

いかなる分野の研究であれ、過去に別の研究者によって報告された研究成果が土台となって進められるものです。それゆえ学術出版は、論文がひとりでも多くの読者の目に触れることを第一の目標とすべきではないでしょうか。科学技術の進歩によって、これまでになく容易に情報を広めることができるようになりました。しかし、このような変革が何の困難も伴わずになされることはありえません。著者が出版経費の負担を求められることは困難のひとつですが、自らの研究成果を世界に広めることを目指すのであれば、オープンアクセスがもたらす恩恵は長期的にはコストを上回るという見方もできるでしょう。また、最先端の研究論文を呼び込もうとするオープンアクセスジャーナルで論文を発表することは、著者に一層の利益をもたらすとも言えます。結果的に、この変革によってジャーナルに発表される研究の質は底上げされ、研究論文にアクセスできる読者の数が劇的に増えるであろうことは間違いないでしょう。


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