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- G.A., シニアエディター

インターネット時代の到来によって、学術ジャーナルや学術出版社もその運営方法を大きく変えることになりました。論文出版プロセスのスピードが加速する一方、出版物にアクセスが可能な地域は世界中に広まりつつあります。 学術出版界で今盛んに論じられている課題のひとつとして、出版物へのアクセスがあります。

これまで大型図書館では、書架に収納できる限り多くの主要ジャーナルを大量に購入してきました。ところが研究成果やデータの電子化が進むにつれ、インターネットが現代の図書館としての役割を担うようになってきています。今やインターネットに接続できる人なら誰でも最先端の研究成果にアクセスできます。そこでジャーナルや出版社は、出版物へのアクセスをどのような条件のもと制限すべきか、という問題に直面することになりました。

もはや紙媒体の売上に頼れなくなった出版社は、ライセンス契約を結んだ大学から受け取る利用許諾料より収益を上げています。これらの大学に所属する研究者や学生は電子版ジャーナルを閲覧できます。このような紙から電子媒体への移行を受け、ジャーナルへのアクセスをさらに広げて行くべきだと考える研究者も出てきました。特定の機関に所属する研究者や学生だけに閲覧権を与えるのではなく、研究成果は一般の人が誰でも無料で閲覧できるものであるべきだというのが、これらオープンアクセス支持者の主張するところです。このような風潮に与する形で、研究者にオープンアクセスジャーナルへの投稿を推奨するヨーロッパの研究資金提供機関も増えてきています。現在オープンアクセスジャーナルの数は増加の一途をたどっており、従来の出版社がオープンアクセスジャーナルを新たに発行するという動きさえ出てきています。

ジャーナルが次々と冊子体の出版を打ち切る一方、研究者にとっては図書館の貸出カードよりもタブレット端末を使う機会が増えている現状をかんがみれば、学術出版がこの先も進化していくことは明らかです。ターゲットジャーナルを検討する際に、現時点ではオープンアクセスを考慮に入れることはないかもしれません。でもこれからは、研究資金提供機関の方針や共著者の意見などに後押しされて、オープンアクセスであるかどうかが検討要素のひとつとなるかもしれません。投稿先としてオープンアクセスジャーナルを検討する著者の中には、インパクトファクターの向上に取り組んでいる新規のオープンアクセスジャーナルを絶好の発表の場と考える研究者もいます。選択肢のひとつとしてオープンアクセスジャーナルを考慮に入れてみてはいかがでしょうか。


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