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- G.A., シニアエディター

現代科学において査読は重要な役割を果たしています。しかし、そのプロセスに問題がないわけではありません。ここ数年だけでも、著者による査読の不正操作が発覚し、ジャーナルから何百もの論文が撤回されました。 査読システムは、心ない研究者によって悪用される可能性があるのです。しかし、査読の問題点を考える際には、著者の研究倫理だけでなく、査読結果に影響を与える可能性のあるその他の要因についても考慮する必要があります。

カナダ保健研究機構に2012年から2014年にかけて提出されたグラント申請書の審査結果を分析し、査読段階にどのようなバイアスが存在するか検証した論文がカナディアン・メディカル・アソシエーション・ジャーナルに発表されました。この論文では、助成金をめぐる競争において、申請者の性別や、査読者の性別・査読経験・論文採択率・利益相反の有無など、さまざまな要因が査読結果に影響を及ぼす可能性があると指摘されています。こうした要因が複合的に作用して、提案された研究に対する評価を変え、申請者に不利になる場合があるのです。

グラントの競争率は非常に高く、申請者全員に対して公平で公正な審査が行われるべきです。この論文で指摘されているように、グラント申請の採択率に影響を与える要因は複数あり、そのほとんどは査読システム全体に関わっていますが、モニタリングの実施とポリシーの策定により取り組むことが可能です。

グラント申請の採択結果に影響を与える要因の存在が発覚したことは残念ですが、査読で生じ得るすべてのバイアスを特定し、排除することは重要です。可能性を秘めた研究が査読で却下され、日の目を見ないのは、科学者にとっても一般人にとっても大きな損失だからです。

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