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- G.A., シニアエディター

大学の図書館や研究室、オンラインコミュニティでは、オープンアクセスのメリットやジャーナル購読料の負担について何年も前から熱心に議論されています。これまでは口頭や文書主体の意見交換でしたが、今年は新たな媒体を用いて情報発信が行われました。

2018年9月5日、学術出版業界とオープンアクセスの現状に関するドキュメンタリー映画『Paywall: The Business of Scholarship』のワールドプレミアがワシントンDCで開催されました。現在は公式ウェブサイトから無料で視聴またはダウンロードすることができ、どの国でも上映することもできます。

この映画は、出版業界について公平でバランスのとれた見方を示すものではないとしており、実際、従来の購読型ジャーナルに発表された論文にアクセスする購読料について厳しく批判しています。そのため、この映画を観るのは、オープンアクセスを支持する人や、購読料を払わなければ公的助成を受けた研究成果にアクセスできないことに不満を抱いている人に限られるかもしれません。それでもこのドキュメンタリーで取り上げられた商業出版社の1社である英科学誌ネイチャーは、この作品に関心を寄せ、一部批判を含めた映画評をウェブサイトに掲載しています。

学術論文の商業出版社は、研究者が成果を発表する場の主な提供者として長期にわたり大きな利益を得てきました。オープンアクセス化の流れを受けて、大手商業出版社に変化が生じたのは確かですし、小規模で専門分野に特化した出版社の成長を促しましたが、当面は大手出版社による寡占状態が続くと思われます。今回のドキュメンタリー映画に学術出版業界を大きく変えるほどの影響力があるかどうかは、時間が経たなければ分かりません。

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