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- G.A., シニアエディター

イギリスは2016年の国民投票欧州連合(EU)からの離脱を決定しましたが、その後の足取りは遅く、先行きも不透明なものとなっています。イギリスがEU諸国との間に築いてきた長い歴史や緊密な関係を考えれば、明快な方向性を決めかねているのも無理はありません。円滑な離脱を実現するには、移民、貿易、安全保障といった問題に対処しなければならないからです。しかしそれだけではなく、科学者たちは、Brexitがイギリスの学術研究にもたらす影響について警鐘を鳴らしています。

イギリスは、長らく科学的発見を牽引してきた歴史を持ち、世界でもっとも権威ある大学を複数擁しています。しかしながら研究者のなかには、Brexitが研究資金に及ぼす影響を心配する人もいます。もしBrexit実施前に研究資金提供機関との調整が行われなければ、イギリスの研究者は数十億ユーロの研究資金を失う可能性があります。また研究機関からは、Brexit後、移民問題によってEU圏の優秀な科学者がイギリスの研究機関での役職を敬遠するようになるのではないか、という懸念もあがっています。

イギリスとEUの関係の複雑さを考えると、EU加盟に関して不安を抱くことはイギリスにとって当然なことであり、慎重を要するものでしたが、「離脱」か「残留」かのみで国民投票を行ったため、これらの懸念点について十分に検討出来ない状況へと追い込まれてしまったと言えるかもしれません。しかしながら、Brexitはすでに国民投票で決まったことであり、今なされるべきは、これからやってくる新しい現実にイギリスの機関が備えられるよう、政治家や科学者をはじめすべての国民が責任を果たすことです。

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