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- K.R., エディター

2018年前半、大手テック企業に対する人びとの支持は、業界を悩ませた最近の一連のスキャンダルを切り抜けたように見えました。 しかしそれ以来、人びとの認識は変化し、特にフェイスブックに対してはここ半年、非難の声が高まっています。この反感はプライバシーと信頼を取り巻く問題から生まれましたが、フェイスブックが政治的論考、さらには科学研究に及ぼす取り返しのつかない損害と比べてどの程度媒体として役立つのかについても疑問の声が上がっています。

11月にNatureに掲載された報告書には、臨床試験を行っている研究者にフェイスブックが及ぼす悪影響について記載されています。臨床試験の参加者がオンラインでお互いを見つけて連絡を取りあうことがますます可能になっており、参加者は、実薬またはプラセボのどちらが自分に投与されているのか判断する機会として利用しています。またオンラインディスカッションの影響により、参加者が薬剤の潜在的な副作用について話し合う、規則の抜け穴を利用して有望な治療を受けられるようにする、さらには治験への参加を撤回するという事態にまで至っています。ある研究者は「フェイスブックが治験の科学的公正性を脅かすのはもう時間の問題だ」と指摘しています。

しかし多くの人が指摘するように、デジタル時代にオンラインで人とつながるのを止めることは手遅れで、以前の状態に戻すことは現実的ではありません。さらに、フェイスブックには将来の科学において果たすべき有益な役割があることは否定できません。大量のオンラインデータからより多くのプロファイリングに対応できるようになったことで、臨床試験のリクルート対象者を迅速に特定できるようになりました。特に希少な疾患に注目が集まり、個別化医療によって以前よりも個人に最適な治療法を選ぶことが出来るようになった今、フェイスブックのおかげでさらに的を絞って治験候補者を探せるようになりました。厳しいレジメンの長期試験に登録することを参加者が躊躇したり、重篤な副作用の可能性があることで、治験リクルートメントは記録的な不振に陥っている状況を考えると、フェイスブックを取り巻く問題は複雑です。

「move fast and break things(速く動いて物事を破壊する)」アプローチのもたらした結果についてフェイスブックが批判されるのは当然ですが、史上最大の個人データレポジトリには潜在的利益があることも認められるべきです。ただし、潜在的利益を語る際には、プライバシー、信頼、そしてユーザーや社会全体に対して負う責任を必ず念頭に置かなければなりません。

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