特集記事

- C.C.,エディター

先月号では、学術出版の未来に向けた新しい技術的解決策の登場について簡単に触れました。今回の記事では、そうした新興技術の一つである「ブロックチェーン」を詳しく取り上げます。

まず、ブロックチェーンとはいったい何でしょうか。「ブロックチェーン」はここ数年で大変話題になっているバズワードですが、ビットコインやイーサリアムといった暗号通貨と関連があること位しか知られていないかもしれません。技術的な詳細は省略しますが、ブロックチェーンとは、ピアツーピアネットワーク内で暗号化されたデータの「ブロック」が「チェーン」状に接続された共有型または分散型のデジタル台帳で構成される新しいデジタルテクノロジーです。さて、つまりどういうものなのでしょうか。

重要なことは、ブロックチェーンソリューションが適切に実装されれば、学術出版のすべてとは言わないまでも多くの面で、セキュリティ、スピード、効率を大幅に向上できるということです。ブロックチェーンを使用して適切に構築されたシステムでは、分散化された永続的かつ不変の記録を提供することが可能で、研究におけるデータリネージなど、多くの問題を解決できるようになります。研究者を対象としたブロックチェーンプラットフォームであるARTiFACTSによると、データの引用を監視して研究者の知的財産を保護する現在のシステムは、低速で、信頼性が低く、非効率で、異なるインデックス間で一貫性がないのが現状とのことです。そして、こうした問題によって、研究者はデータのコントロールを失うことを懸念してデータの共有をためらい、結果としてコンテンツ不足や研究の不要な重複といった非効率を招くのではないかと述べられています。ARTiFACTのようなサービスは、ブロックチェーン技術を使用してこれらの問題を是正し、研究成果をリアルタイムかつ不変に監視できることを目指しています。ブロックチェーンの潜在的効果はさらに広がる可能性があります。2019年の調査では、スマートコントラクトを活用し、査読などの出版プロセスを合理化および最適化するフレームワークを作成する可能性について論じています。

オープンサイエンスの普及が進み、研究出版物にデジタルメディアが統合され、AIやブロックチェーンといったデジタル技術の開発や導入が急速に進んでいることは、学術界が長年の懸案である大改革に取り組む可能性を示しているように思えます。

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